夏と海と君と
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眩しいくらいに照り付ける太陽







どこまでも澄み渡る真っ青な空







鼻腔を擽る潮の香りに、癒される波の音










俺の隣には君がいて……























「まーつーだーさーん!!そんなとこでボーっとしてないで荷物運ぶの手伝って下さいよ〜!!」






岩崎の若干キレ気味な叫び声に俺は我に返る








君もいるけど、残念ながら2人きりじゃない








「もぉ、何してるんですか〜!しっかり運ばないとビール出しませんよ〜」





「はは…悪い、悪い。それは、勘弁してくれ」










今日は、営業企画セクションの奴らで海に来ていた






大きなプロジェクトが無事成功したから、ご褒美の意味で俺が提案したんだけど







俺にとっては別な意味も含まれていた
















「松田さん、私も持つの手伝います」





両手に荷物を抱える俺に声を掛けてきたのは、その別な意味の君







「そうか?……じゃぁ、畑谷はこれな」





一旦荷物を置いて、持っていた浮き輪を頭から畑谷の体に通す






「おっ!?似合うな」





からかう様におどけてみせると





「もぉ、松田さん!からかってないで、ちゃんと荷物下さいよ」





君は頬をほんのり紅く染め、その頬を膨らませる







そんな怒った君も、俺の目には堪らなく可愛く映って






「いいんだよ。こういうのは、男の役目」






フワフワな髪に触れたくて、頭を撫でた掌は






異常なまでに熱を帯びていた




















派遣でうちへ来た畑谷






当初の契約を更新してもらって、ここには3ヶ月になる







まだ3ヶ月






けど、もう3ヶ月










俺は焦り始めていた










いつかは会社を離れてしまう君










その前に、俺のこの想いを―――………


















でも、どうやって?









「松田さーん!泳がないんですか〜?」





「……あ、あぁ…今、行く」






他の奴らもいるこの状況で、俺は完全にタイミングを逃していた






情けない





三十路のいい歳したおっさんが、久し振りの恋に狼狽えている





何て滑稽な絵面だ







けど“それもいいか”と思えてしまうのは






所謂“恋の力”なんだろう







俺も相当ヤられてんな…








きっと、この暑い夏の日射しのせいだ



















「も〜、違うって〜!」






「へっ?!」








「打つ時はこうするんだよ〜!」






心の声が漏れていたのかと一瞬ヒヤリとしたが





ビーチバレーをしている他の連中が打ち方を指南していたらしい









近頃じゃ会社でもこんな調子で





俺の頭の中は畑谷でいっぱいだった












「はー…悪い。やっぱ、ちょっと抜けるわ」





「え〜、もうですか〜!」







こうなったら、早々にアルコールで勢いでもつけた方がいいかもしれないと





岩崎たちの不満の声も聞かず、ビーチサイドへ上がる












すると、その時







俺の視界にふと畑谷の姿が映り込んだ









畑谷は、みんなの荷物が置いてあるパラソルの下で1人ポツンと俯いている









「何してんだ?あいつ…」








時折、柔らかい髪が潮風に揺れ






それはまるで、俺を手招きしている様に見えた









俺は、そんな君から目を逸らせる筈もなく









吸い込まれる様にして引き寄せられていたんだ














bkm
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