激しい雨の中。
 
 傘もささず立ち尽くす。
 
 何て、滑稽なのだろうか。
 
 
 頬に流れている冷たいもの。
これは雨なのか、私の目から流れているのか。そんなこと、もう、どうでも良かった…。今はとにかく何も考えたくなかった。

 ふらふらと歩き出す。ただ、ふらふら、ふらふらと__。
 
 しばらく歩いていると雨が止んだ。頬にはまだ冷たいものが流れている。雲の隙間から太陽が覗く。空を眺めて止まっていた脚をまた動かし、私は日の光から逃げるようにビルとビルの間の小さな路地へと入った。奥へ行ったところのビルの非常階段を登っていく。
このビルはどのくらいの高さだったか。昇るのに疲れたな。あとどれくらいだろうか。など考えている内に屋上に着いたようだ。
 
 しばらくは屋上を歩き回って上からの景色を見ていた。20階ぐらいあるだろうか。日が沈む景色はとても綺麗だった。ビルの端にあるフェンスによりかかる。
 
 「最後の景色がこれで幸せだな…」
 
 フェンスを乗り越える。頬を流れていた冷たいものはなくなっていた。
 
 「これで私の物語は終わる。次の物語はもっと笑いに溢れるのがいいな」
 
 そう言い残し笑顔で飛び降りた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 今日もまた一人、涙を流し消えていく。また一人、また一人と……。
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