Lv3 漂白剤 (異色ろんど)

「ぅぉぉぉおおおおおおお!!!」

ミストリア王国。
始まりの王国として知られるこの王国は、現在名を馳せている魔王城から一番遠く安全な街である。故に冒険初心者が多く集い、武器や防具、ギルド運営も盛んである。現国王は今年で七十歳を迎えるが、現役バリバリで温厚な性格の為、民から慕われており、正に平和を絵に描いたような王国であった。

その郊外。
魔王城から一番遠いとされる為、周りを彷徨く魔物も低レベルなものばかりで、特にレベル一でも倒せる程度のスライムなどが多いこの大平原。
その中を、全力疾走で横切る一人の青年の姿があった。

「ちょ、まっ、本当に無理だってクソ野郎ドッキリならさっさと出てこいよ!! 現実のスライムあんなキモいなんて聞いてないわ! ド◯クエのやつとか現実化してももう少し愛嬌あるわァ!!」

大声で現実逃避と文句を叫びながら走る青年。その後ろにはジェル状の魔物が追いかけて来ていた。ちなみに色は黄色である。

「本当待って! 俺が何したって言うの!? なんかしたのなら謝るからごめんなさいごめんなさい――っていうかスライム超速いんだけど!?」

ぺったんぺったんと吸着音を響かせながら迫ってくるジェル。割と等身大はあるそれは、ぶよぶよ感と地面についているおかげで汚れが凄まじく、気持ち悪いことこの上なかった。

「見たくなかった! 見たくなかったよ!! この有名で結構人気のメジャーモンスターがこんなにも現実的で気持ち悪いとこ見たくなかった!! あとちょくちょく見かける冒険者らしき人達がこっち見ては笑ってくるの心が痛い! 俺の豆腐メンタルが即死する!! くそ、こうなりゃ最後の手段だ……!」

ザッと走る足を止める。砂埃が舞って気管に入って少し咳き込んだ。
持っていたバケツを大きく掲げて、青年は振り被る。

「喰らえ、汚れ落としだジェル野郎!!」

ばっしゃーと中に溜まっていた液体が勢いよく飛び出し、スライムに覆い被さる。

「業務用床用洗剤だクソ! この世界に来てから二つしか無い武器の一つが初っ端から無くなるとかもう死亡フラグしか立た、な、い――」

半ばヤケクソになりながらバケツの中を覗いて目を見開く。
唯二の武器は木製ブラシと床用洗剤だった。
てっきり消費アイテムだと思っていた洗剤は、一滴たりとも減ったりなどしていなかった。

「えっウソマジで? もしかしてこれ最強なんじゃ……」

言って、効果が無かったらどうしようと気付き、先ほどぶっかけたスライムを見る。
するとスライムはまるで塩をかけられたナメクジの様にジュワジュワと音を立てて縮んでいく。ついでに沸騰でもしているかの如くブクブク言っていた。

「あっ、やっぱこれ最強かも知れない! チーフ! 俺この世界でもやってけそうだよ!」

スライムを一匹。割と命懸けで倒し、テンションが上がるのも束の間だった。

「やばい洗剤がここまで凄いなんて聞いてな――」

ぺったん、ぺったんと。
左右同時に聞こえてきたのは、両手を上げてガッツポーズをしている最中だった。

「――まだ居るのかよッ!!」

瞬間、この世界に生まれてから二度目の全力疾走が始まる。
ちなみに色は赤と青だった。



「よーーーく落ち着け南雲さんよ」

路地裏の階段に座り込んで、青年――南雲夕紀は難しい顔をしていた。

「まずは現状確認といこうじゃないか」

事の発端は数時間前に遡る。
現代日本において就職は何よりも大事であった。
大学三年目を迎えた南雲夕紀は、昔から性別を超えて大いに不本意だが『お母さん』と言うあだ名を持つほど家事が大好きである。

小学生。掃除を真面目にやらない男子に「お前がいると毎日大掃除になる」と言われ。
中学生。クラスメイトの女子力高い系女子に「南雲くん絶対料理部入ろう?」と真顔で真剣に誘われ。
高校生。自由時間を全て掃除に費やしていたら修学旅行の宿泊先の方に「来る前よりも綺麗になっていた」と褒められた。

と言うわけで、大学三年目に入った後すぐバイトを始めたのだ。
掃除会社三つくらいを掛け持ちして日々勉学と掃除に勤しんでいたある日のことだった。

「ああ南雲くん。そこの部屋も掃除しといてくれるかな?」
「分かりましたチーフ! お任せください!」
「いや〜、南雲くんが来てから随分と楽になったもんだよ。ありがとうね」
「いえいえ、好きでやってますから!」

そんな会話を述べながら、指定された部屋に入った瞬間の出来事だったのだ。

――この異世界に来たのは。

「そんで初期装備が『ただのエプロン』と『ただのゴム手袋』と『ただの掃除用ゴム長靴』、あと『傷まない木製ブラシ』と『減らない業務用床用洗剤』ってなんだそりゃ!! 俺勇者じゃないの!? せめてでもア◯テマウェポンとかライオン◯ートとかエク◯カリバーの一つや二つでもくれよ!!!」

この世界はロールプレイングゲームに近い様で、レベルアップはするし、モンスターを倒せば金が手に入る様だった。
南雲は空中に人差し指を向けると、下へスライドさせた。ついでに『出てこいー』と念じるのも忘れない。すると画面の様なものが出てくる。
街で見かけた冒険者がやっていたのだが、魔法なのか化学なのかさっぱり分からない仕様である。何度か試行錯誤を繰り返しやっと出すことに成功したのだ。
ただ、仮想現実世界に来たみたいな気分になりちょっと楽しくなってきた。

「まあそれは、言葉も文字も通じればなんだけどなぁ」

さっきから路地裏と隣接している通りを行き交う人々の目が痛い。
当たり前だ。一人で、それも異国語で大声をあげている変な格好の人物がいるのだ。警察くらい呼んでもらっても文句は言えない。
画面も装備の名前だけが日本語であり、あとは全て謎の記号で埋め尽くされていた。レベルすらも分からない。でも多分まだレベル一。

「英語でも無いし、中国語でも無いんだよなぁ。それが書いてあっても読めないんだけどさ」

さて、どうしたものかと溜息を吐く。
唐突に異世界召喚されて、目的も見えないままどうしろと言うのか。

「人生にこれほどまでのクソゲーが有ろうか」

一人でブツブツ呟く。
全く、易しくないことこの上ない。

「ええと、世界観的にはやっぱり中世ヨーロッパ風? うわっ、マジで猫耳付いてる奴居る……。亜人も獣人も普通ってとこか。つまり」

一息置いて立ち上がる。
伸びをしてから腰に手を当てた。

「言語が通じない世界で家事スキルを持ってして目的も自分で見つけるクソゲーに召喚されちゃった仕様ですかそうですか――って、どう考えても無理だろ!!」

ジェットコースターに乗った時以来の大声の罵声が路地裏に響き渡った。
南雲が集めていた視線が更に増え、流石にやり過ぎたと縮こまる。
状況確認は終了だ。次の工程は分かってる。そう――目的を見つけることだ。

「まず仕事かな……。でも掃除って雇ってくれるところあるか? あとせめて数字くらい読めるようにならないと飯が手に入らない……。大金が手に入れば何かと楽なんだが。一先ず生活ができるようにさえなれば、帰る方法はその後でも構わないかな……帰りたいの極みだよこれ。まさに全日本帰りたい協会じゃん」

再びブツブツと思考を巡らせていたその時だ。

「――?」
「はい?」

麦色の、編み込みのある美麗なストレートロングの髪を持つ愛らしい少女が話しかけてきたのだ。
歳は十五、六で、真っ赤な瞳は燃える炎のように、しかし落ち着いていてまるで夕陽を浴びる静かな海のようだった。
髪を裂けて伸びるそれはどうやら耳らしく、所謂エルフという種族だろう。
クリーム色のワンピースがよく似合っていた。
服装のセンスからして、まさにファンタジーだな、と感心させる。
ともあれ、こんな美少女に話しかけられることは南雲の人生の中で初と言っても過言ではなかった。

「な、んでしょうか……?」

思わず声をあげるも、少女の首は折られ、傾げられるばかり。

――ああそうだった。通じないんだった。

そこで南雲は己の意思を示すジェスチャーを思案し始める。
一方の少女はそんな南雲の肩をトントン、と叩いた。

「?」
「――?」

ぱくぱくと声を出して喋っているのは分かるが、言葉はサッパリ分からない。不安そうな表情も深刻な雰囲気を醸し出していた。
だがしかし助かることに、少女は何かを指差してくれている。
それは南雲の尻の下、床だった。

「え、なに――って、ああ!!」

よく見ればかなり汚れていた。暗がりで見えなかったのだ。
つまり少女が言いたかったのは「そこ、汚れてますよ」ということだろう。
親切なところ悪いのだが、遅い。
南雲のズボンは泥と埃と謎の黒い点々ですっかり汚い。

「クソー、ちゃんと街の清掃しとけよな馬鹿野郎! あと君、ありがとう」

再び少女は首を傾げるが、お礼を言っていることは伝わったのか、にこりと愛らしい笑顔を浮かべてみせた。
一方の南雲は、掃除道具を取り出す。
何故か武器認定されてしまったが、本職はこちらなのだ。積極的に掃除に使っていかなければ掃除道具だと忘れそうである。
丁度床用洗剤だから都合がいい。
洗剤を床にぶちまけ、木製ブラシで擦っていく。
すると汚れはみるみる取れていった。
瞬間、

「――!」

少女が声を上げた。吃驚して振り返ると、目を輝かせているようである。

「え、あ、まだ居たのか……」
「――? ――!」

相変わらず何を言っているのかは不明だが、どうやら驚いている様子。
今度は南雲が首を傾げる番となった。
恐らくこの世界にこういう掃除道具が無いせいで驚いていると思われるのだが。
流石中世ヨーロッパ風世界観と言ったところか。ことごとく元いた世界とは文明がかけ離れているようだ。

「で、これは何が言いたくて喋りまくってんのか……」
「――! ――!」
「は、えっ、ちょっと待っ――!?」

少女の見た目とは裏腹に物凄い力で腕を引っ張られる。
あっという間に路地裏を抜けて、昼空の下に展開された屋台の連なる商店街を抜け、人通りの少ない場所へと到着。
その間南雲は「何食べたら女の子がこんな力を持てるの!?」と叫んでいるだけだった。



木製の小さな建物は所々に埃を纏った蜘蛛の巣が張り付いており、正直言ってゴーストハウス的な雰囲気を醸し出していた。
建物自体の雰囲気を中和しようと置かれたと思われる植木は、何故か元気が無いように見えて、非常に残念なことに建物と一体化している。
黒板を用いた看板には相変わらず謎の記号ばかりだが、恐らくカフェであろうと予想させた。

「これは……超近付きたくない店ベスト三にランクインしそうなカフェだな……」

どうせ相手には分からないことを良い事に、どんどん失礼なことを口に出していくスタイルに切り替えた南雲がボソリと呟く。

「こんなとこに連れて来た意図はまあ何となく察しがつくさ」

ちらりと隣に立つ少女を見る。
少女は手を合わせて懇願しているような姿勢を取っていた。

「――!」
「お願いだから掃除して、とかだろうなぁ多分」

こちらは特に急ぎの用事もない。断って去ったところで、根本的物事など解決もしない。
恩を売っておいて損は無いだろう、ということで南雲は再び掃除道具を取り出して中に入る。

「うーーーーわーーーーー」

思わず溢れる呆れ。
それほどまでに、店内は酷かった。
何年間も放置し続けたかの様に埃を被った全ての家具。天井には蜘蛛の巣っぽいものが張っており、足元には多分ネズミやゴキブリに分類されるであろう動物や虫が闊歩していた。

「マジでこんなの初めてなんだけど……」

これを一人に任せる気かこいつは、と少女の方をちらりと見る。
明らかに少女は申し訳なさそうにそっぽを向いていた。吹けもしない癖に口笛まで吹いてくれている。

「…………ねえ」

呆れ顔を少女に向けて、南雲は声をかけた。
途端に少女は素直にこちらを見る。
一先ず、家具を全て外に出してしまいたいのだ。手伝ってくれなければ一週間は終わらない。
どうジェスチャーに表わそうかと悩んで、とりあえずテーブルを手に取る。それを外に出して見せて、次に人差し指で店内を指し、そして今いる場所を指す。

「手伝ってくれない? って、伝わるかなー……」
「――? ――! ――!!」

少女は首を傾げ、それからぱっと顔を上げた。
スタタッと店内に走っていく。少しだけ待ってみると、椅子を持って現れた。どうやら理解したようだ。
ほっと胸を撫で下ろし、作業を続行。
まさか異世界に来てまで、掃除業をすることになるとは……というかそもそも、異世界に来ることになるとは夢にも思わなかったと、南雲は溜息をついた。



流石床用洗剤マジ神最高に大好き愛してる、と。
南雲は涙ながらにブツブツと呟いていた。
埃は全て外に出した。――その後少女が魔法で燃やしていた。
ゴミも全部袋にまとめた。――その後少女はやっぱり魔法で燃やしていた。
ネズミやゴキブリっぽいものの退治も終わった。――その後少女は以下略。

「って、お前燃やすことしかしてねぇな!?」

耐えきれずにそう突っ込みを出した瞬間である。
謎の軽快な音楽が流れたのは。

「???」
「――! ――!!」

全くもってどこに音源があったのか謎すぎて首を傾げる。ぶっちゃけ頭の中に直接流れたように感じたのだが、気になるのはそこではない。
――妙に、今の音楽ドラ○エに似ていた。
パクリなのかパクリでないのかすごく問いただしたいところではある。
そんな南雲をよそに、少女は何やらはしゃいているご様子。
しかし南雲が嬉しそうでは無いのを見ると、ツンツンと肩を突く。
振り返ってみると、空中で指をスライドさせていた。

「……あ、あーそういうことね」

あの動きはステータスの開き方だ。
南雲は理解して、出してみる。

「うそ、だろ……」

戦慄した。
いくらなんでも、これはいくらなんでも。
おかしい、おかしすぎる。
――だって、

「掃除でレベルアップ、だと……!?」

先ほど見たステータスと変わったところが二つある。
一つは恐らくレベルが書かれているであろう、日本語で書かれた名前の隣。文字が変わっているため、多分レベル二になったのだ。何よりもまず、ドラク○のレベルアップ音が動かぬ証拠だろう。
もう一つは武器一覧。
床用洗剤の隣にビックリマークが付いていた。
ここはこちらの世界の記号なんだな、と思いつつ床用洗剤欄をタップ。
隣接して出た画面に映ったのは――

「カビ○ラー!!! かよ!!!」

叫びながらそのまま南雲は崩れ落ちる。
あーこれアレだ。レベルアップすると武器の種類増えるやつだ。これで最強目指せってか? 掃除界の最強? そうだねうんなれそうな気がすごくしてきた。

「じゃなくて!!」

この世界は突っ込みどころが多すぎて疲れてくる。
今更カ○キラーが手に入っても使いどころが無い。

「――待て、ここまで汚かったんだ。カフェだし水場くらいあるはずだ」

恐る恐る、カウンター近くのドアに近づく。
この部屋は結構綺麗になった。
長年積んだ掃除スキルを駆使すれば、このくらいの広さなど数時間で終わる。
あとは模様替えさえすれば、かなり雰囲気の良いカフェになるはずだ。
そして南雲はドアノブに手を掛けた。
きい、と古びた音がする。
ごくり、と唾を飲み込んで、

「あーーーーーーー」

延長に突入した。



「ここまで良くなればまた店開けるんじゃないかな」

結局三日かけてこのカフェを綺麗にすることになった。ついでにレベルも三になった。
唯一良かったのは、飯と寝床があったくらいだ。お礼として提供してくれたのだ。
三日も少女と少女の家族にお世話になれば、言葉も少しだけ分かってくる。これは貴重な経験だった。
だが相変わらず大半は何を言っているのかさっぱりなので、少女の名前は分からずじまいだったが。
目の前でぺこぺこと頭を下げる少女に「いいよいいよ」と言いながら謙遜する。

「――……!」
「?」

ステータスを開いて、と少女がジェスチャーした。
それとこれも、と言わんばかりに何やら紙を渡される。割と羊皮紙に近く、紙と言っても現代の真っ白な紙とは程遠かったが。

「おお、これもしかして……」

謎の記号が並べられた紙は、今の南雲ならば少しは分かる。
恐らく、数字が書かれた紙だろう。
レベルアップ時に見た二や三と同じものが書かれている為、多分合っているはずだ。
ついでにステータスの金も増えていた。
掃除しただけなのにこのお礼の数々……、と。
南雲の瞳が潤む。

「世の中、した分以上に帰ってくることもあるんだなぁ……」

数字の読み方は分からないが、これで物が買えるはずだ。
もう一度、少女が頭を下げてから去っていく。
元気に手を振っていたので、多分別れ際の動作はどこの世界も変わらないのだろう。

「さて、とりあえず更に金を集めるべくモンスターを倒すぜ俺! 強くないとやってけないパターンでもある気がするんだなこれが!」

方向を変えて郊外へ。
スライムくらい余裕で倒せなければ金は手に入らない。――だってスライムの報酬金額一桁だったから。
数字早見表を貰った今、思い返せば一体五円くらいだった。
塵も積もれば山となる、ということわざがあるが、流石に頑張って狩り尽くすほど倒しても数百円にしかならないだろう。
世の中しんどい。

「そもそも帰りたいんだ俺は。世界救ったら帰れるパターンとかだったら真っ先に死ぬぞ俺。くそよわだからな」

この世界に来てから独り言が止まらない。
やがて草原の音が聞こえ、ついでに聞きたくもない吸着音。

――やって来た。この忌まわしき場所へ。

「さあ来い、スライムめ!」

ぺったんぺったん。
徐々に近づいてくる緑色の物体。
正直折角の景観がカラフルなスライムの所為で台無しになっていることこの上ない。

「くらえ! 新しく入手した○ビキラーだ!」

勢いよく飛び出した泡はスライムに降りかかり――だがしかし全くと言っていいほど効果が無かった。
レベルアップまでして手に入れた武器がこれだ。
効果と言えばスライムが何が起きたのか分からずにフリーズしているくらいで、やはりそれは数秒と経たず。

「スライム倒すの床用洗剤オンリーかよ!!!」

南雲は怒号と共に大草原の中を走り出す。その後ろを律儀に吸着音が付いてくる。
一体スライムは何を求めて冒険者達に突っかかってくるのか。

「あークソ! 武器変えるのどうやるんだっけめんどくせぇ!」

必死にステータスを出しながら全速力で走る。
息が切れそうなところで漸く準備が整い、バケツをひっくり返した。
ナメクジのようなスライムはダウンし、手元には金と経験値が残る。
はあ、はあと口で息をしながら南雲はポツリと思い付いたことを口にする。

「これ、掃除業した方がレベルアップも金も早くねぇか……?」

そう思ってしまったら確実にモンスターを倒す方が手間に思えてきた。
南雲は踵を返し、王国方面へと歩き出す。

「……うん、掃除しよう」

――王国内で言葉は通じない上に掃除道具も見たことが無いが、仕事はちゃんとやるし値段もリーズナブルな掃除業者が巷で有名になったのは、また別の話である。

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