―――

何か面白いことはないかな。
私はそんなことを考えながらフラフラと歩いていた。
そろそろこのバカ平和な街にも、事件の一つや二つ起こってもいいと思うのだけれど……
「じゃじゃーん!!」
平和すぎてあくびが出ちゃうなぁ……
「じゃっじゃーん!!」
面白いこと、どっかそのへんに落ちてないかなぁ……
「もーうっ、ムシしちゃやだよー!!」
その時、ふよふよと何かが漂ってきた。
「あぁ……ごめん、ガチで気付かなかったや」
そういえば何か声が聞こえるなぁと思ったら、ユウちゃんが目の前にいるではないか。その少し後ろにはレイくんもいる。
「どんだけー!まったくもう、ジャック・オー・ランタンはユカイだなー!」
幽霊にユカイと言われるとか、相当なんだろうな。そろそろ天に召される支度をした方がいいのかも。
「それはそうと、トリック・オア・トリィ〜トォ!!」
目の前の幽霊は、何やら摩訶不思議な呪文を唱えている。しかもちょっと独特な訛りが混じってる。
ところで、この呪文の意味は?
「…お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ」
「ふえっ!?」
いつのまにか私の後ろに回り込んでいたレイくんが私の耳元で囁く。おかげで変な声が私の口から出てしまい、思わず自分でゾッと鳥肌が立ってしまった。
「えっと…今日はハロウィンだっけ?」
「そうデース!ユウちゃんはお菓子がほしいのだぁ〜!!」
「…お菓子ほしい」
そうか、今日はハロウィンだったか…しかし、私はお菓子なんて持ってない。どこぞのアヤシイお兄さんとは違うのだ、年中お菓子を持ち歩けるほどお菓子好きではない。
「ごめんよ、ユウちゃんレイくん。今日はお菓子持ってないんだ」
それを聞いたユウちゃんが、がっくしと項垂れた。
「しょぼーん…」
頭を撫でてあげたいけど、触れない。なんだか少しだけ、切なかった。
するとユウちゃんは突然何か閃いたようにバッと頭を上げた。
「じゃあ、イタズラ決行デース!!」
「げげぇ!?」
この子たちの考えるイタズラって、やっぱり……
「ユウレイになっちゃいましょー!!」
「お断りします!!」
ヤバい。超ヤバい。すぐに家帰ってお菓子持ってこなきゃ。


END.

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