――― 負けましたとも。はい負けましたとも。この炬燵ヤローに負けましたとも。 「炬燵入ってく?」 「入らねーよ!!」 ダブルバトルが苦手ながらも勝ち進んできたダブルトレイン。その最後に待ち受けていたのがコイツ、クダリさんだった。 あろうことかコイツは、車両の中で炬燵に入りながら私を待っていた。曰く「だって今日寒いし」。次の停車駅までつかみ所のまったくわからないコイツと一緒にいなければならないと思うと、苦痛で仕方なかった。 炬燵でぬくぬくとしているクダリさんを、電車の椅子に座りながら眺めてみる。 完全にノボリさんの色違いだ。黒い彼は、私が言うのも何だけど結構カッコよくて紳士。シングルトレインで相手してもらった時、そう感じた。なのにコイツは、つかみ所のわからない子供っぽい性格をしている。 「どうしたの、ぼくのことそんなに見つめちゃって」 クダリさんが私の方を向く。なんなんだろう、コイツは。一瞬あまりにも似ていたからノボリさんと同一人物なのかと思った。でも全然違う。彼の纏う気配はノボリさんのそれじゃない。声も若干違う。 「恋しちゃった?」 「うるせー黙れ」 白いそれは「てへっ」と笑う。かわいくねぇ。大体その歳でその口調ってどうなんだ。 話を戻すと、ノボリさんとクダリさん=双子というのが正解なのだろう。姿形は似てるのに、まったく違う。でもそれは、何も彼らに限ったことではないのだ。なのに…なのに引っかかる。いや、引っかかるというのには些か語弊がある。 悔しいことに、私は彼のことをもっと知りたいと思ってしまっていた。 「クダリ」 もう「さん」を付けるのも煩わしくなった。彼は「ん?」と貼り付けたような笑みを見せながら私を見る。 「私、ダブルバトルの練習たくさんするよ。だから、また勝ち進んでこれたら相手してほしい」 アンタのことをもっと知りたい。バトルなんて口実に過ぎなかった。 白い道化のような車掌は「うん、いいよ」と、貼り付けたような笑みのまま答えてくれた。 END. 戻る |