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「ノボリー」
クダリは休憩室で昼休憩をとっていたノボリに手招きする。
当然ノボリは何事かとそこまで歩み寄った。そして、クダリの後ろにいる頭一個分小さいそれを見て大層驚いた。
「マワリにトマリではないですか!遠いところからわざわざ…」
頭一個分小さいそれは、紛れも無く自分の従兄弟。それも自分たちと同じく双子。マワリ、と呼ばれた少女はニコリと笑った。
「ノボリ兄さん!お久しぶりです!」
トマリ、と呼ばれた少年は無愛想なしかめっ面を浮かべながらノボリを見つめていた。
「…相変わらずだね」
この生意気さも相変わらずである。
「…それで、今日はどうしてこちらに?」
ノボリはトマリの言葉に苦笑しつつ、マワリに質問を投げかける。
「あ、うん。あたしたち、こないだからイッシュで暮らすことになったんだ」
突然の二人の来訪に大層驚いたノボリだったが、この言葉を聞いて更に驚いた。のと裏腹に表情はちょっとだけ緩んでる。なんせノボリは二人のことが大好きだからだ。愛してると言っても過言じゃないらしい。もちろんクダリのことも大好きらしい。俗に言う、ブラコンとかシスコンとかいうやつだ。
「そうだったのですか!もっと早くに教えてくだされば良かったのに!」
「もっと早くに教えたら、ノボリ兄さん発狂するから」
メンドウなんだよね、とトマリが呟く。それに同意するかのようにクダリがこくこくと頷いてみせると、今度は彼が口を開く。
「それでね。今度新しくローテーショントレインとトリプルトレインができるでしょ」
ローテーショントレインとトリプルトレインとは、今度新しくバトルサブウェイに登場する電車だ。その名の通り、ローテーションバトルやトリプルトレインで勝ち抜いていく形式だ。
しかし、その二つのサブウェイマスターに相応しい人物が見つかっていなかった。ノボリとクダリが担当してもいいのだが、さすがにシングルやダブルやマルチもある中で、更にもう一つ分野を研究しろとなるとそうもいかない。なので、この問題は二人も頭を抱えていたのだ。
「マワリとトマリがやってくれることになったよ」
だから、この発表はノボリを衝撃の渦潮に飲み込み、そしてハッキョーセットなどという言葉が生まれた時のような異常なテンションの高ぶりを記録させた。
「………」
「……?」
ノボリは黙りこくってしまった。あまりの衝撃にどうしていいかわからなくなったのだ。
「ブラボー!!スーパーブラボー!!」
とりあえず、彼は叫んだのだった。そうするしか、なかったのだ。



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