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いよいよ明日は『秋の大魔導大会』。サタンやアミティと魔導の修行をみっちりとやり、城に帰ってからはイメージトレーニングと学校で習った魔導科の復習をするのがここ最近の日課。
すべては元の世界に帰るために。
そのためなら誰にも負けない。負けられない。
こんなに確かな意志を持ったのは初めてかもしれない。私にはそんな勇気がなかったから。それもこれも、ここにいる人達やりんごのおかげだ。
…私は、変われるのかな?消極的なこの性格から脱却することはできるのだろうか。
「…緊張、するなぁ」
先のことはわからないので、とにかく明日の大会のことを考えることにした。

パン!パンパン!
青空に花火が打ち上がる。それを確認したあとアコール先生は朝礼台の上に立ち、マイクを持つと宣言した。
「ではこれより、秋の大魔導大会を始めます」
ざわついていた会場が、もっと騒がしくなった。
皆が「がんばるぞー!」だの、「負けませんわよ!」だの、「あ、ムシだー」だのと各々の思いを呟いてるのを聞きながら、私はガッチガチに固まっていた。
他の皆は魔導を日常的に使っている。ここ最近魔導の勉強を始めた私なんかが、本当に優勝なんてできるのだろうか?サタンやアミティ、りんごは「大丈夫だ」と言ってくれた。が、やっぱり自信はない。
その時、ポンと肩に手を置かれた。
「お互いベストを尽くそうね!」
アミティだ。正直手の内を知られているような気がするので、一番最初に当たりたくはない……
とは言ってもトーナメントの相手はくじびきで決まるため、完全に運任せである。どうかアミティには当たりませんように。私はそう念じながら開始前に配られていた紙を開く。
「…伍」
この紙と同じ文字が書いてある紙を持っている人を探せばいいのか。面倒なシステムだなぁ、と思いながら私は会場内をうろうろと歩きまわった。