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「せぇいっ!!」
ルルーが拳を振るう。
「はぁっ!!」
ラフィーナが蹴り上げる。
二人揃って体術メインで向かってくる。それだけに当たると物凄く痛いことだけはわかる。身のこなしが格闘家そのものであった。そのあまりの迫力に情けないことに私は避けることしかできなかった。
「グレール!!」
突如上空から私の目の前に降り立ったラフィーナがそう唱えた刹那、私の頬に痛みが走った。それがなんなのか確認する前に懐に入られる。
「もらった!」
しまった、と思う時には遅い。ラフィーナの構えた拳が綺麗な線を描き私の鳩尾へと入っていく―――
「アスマルト!!」
覚悟を決めた時、くすんだような青い光と共にラフィーナが吹き飛ばされた。その詠唱の声、シグ。シグは私の方まで駆け寄ってくると私の顔を覗き込む。
「ほっぺ、だいじょうぶ?」
その問いにハッと気付き微かに痛む自分の頬を撫でてその手を見てみる。指先に血。ということは、やはりさっきラフィーナに切られたのか。
「おしゃべりしてる暇なんてございますの!?」
ラフィーナを吹っ飛ばした青い光が消えると同時に聞こえる声。その主、ルルー。気付いた頃にはやはり遅い。だって彼女たちは…私たちよりも身体能力が大幅に高い。
「風神脚!!」
周囲を薙ぐような蹴り。それを受けた私はシグを巻き込んで横へと飛ばされていく。その先には……
「オラージュ!!」
目一杯の助走をつけて頭突きを仕掛けようとするラフィーナの姿。その周囲にはパリパリと音を立てて電気が発生していた。
とにかくシグを巻き込むわけにはいかない。私はシグを抱え込むと痛む脇腹を押さえながら頭突きを仕掛けてくるラフィーナを見据える。
イメージ。―ラフィーナを風で吹っ飛ばす。
集中。―魔力を集中させる。
詠唱。―イメージを魔力に乗せて押し出す。
「ウィンド!!」
シグをしっかり抱え込みながら頭上―ラフィーナのいる方向に手を向ける。
ドンッ!!
突風の巻き起こる音共に反動で地面に落ちると、ゴホゴホと咳き込む。まだ脇腹がジンジンと痛い。
「きゃあああッ!!」
後ろでラフィーナの悲鳴が聞こえたが、それを気にしている暇はない。私はシグを解放すると、お互い背中合わせに立つ。それぞれの視線の先には、あの二人。