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城に住むと言っても三食昼寝おやつ付きというわけではなく。
「あっさでっすよー、起きてくださいねーサタン『さま』」
何故か私が朝食の準備をして、そしてサタンを起こしに来ていた。いや、住まわせてもらう身として自分のことは自分でやるのは当然だろうが、誰もサタンの面倒を見るとは言っていないはずだ。
『さま』だけを強調して彼の身体を揺するが、反応なし。
早くしないと学校に遅刻してしまう…こうなったら、と強行手段に出てみる。
「起ーきろー!!」
バサッと掛け布団を勢いよく剥がした。しかし、サタンは『うーん…』と更に身を縮こませてまるで胎児のような体勢でなおも寝ていた。しかもカーバンクルの抱きまくらを抱いてた。アンタはどこの小学生だ。
「…もういいや。先にご飯食べて学校行っちゃお」
先程も言った通り、誰も彼の面倒を見るとは言ってない。だから放っておいてもバチは当たらない。そういうことにしておかないと、学校初日から遅刻という大変不名誉なことになってしまう。
けれどもあまりにもムカつくので、一発お見舞いしてやろうとサタンの背に向かって思い切り鉄拳を喰らわせてみた。
「ぐぎゃああああああッ!?」
「…!?」
ドスンッ!
…驚いたことに、サタンはベッドから転げ落ちた。私の拳ってそんなに力強かったっけか?少なくとも標準値のハズなんだけども……
「…ユリア……貴様強化系の魔導か何かを使ったか…?」
背中をさすりながらベッドに這い上がってきたサタンは眉間に皺を寄せながら私を見る。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「い、いや…わかんない……」
「…早く学校に行け」
ハァ、とサタンに溜息をつかれた。溜息をつきたいのはこっちも同じだというのに。


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