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私は改めて彼女を見る。誰にも邪魔されたくない『運命』。運命は一人一人平等に決められているものなのかもしれないが、それに従うということはただレールの上をひた走る電車にもできること。
私たちには足がある。知能もある。だから次の停車駅で乗り換えができるのだ。乗り換えることによって、より遠くへ行くこともできる。
だから私は乗り換えて彼女よりも遠くへ行く。
彼女が恐れているのは、間違えて乗り換えてしまわないかということ。だから、決められたレールの上をただひたすらに走り続ける。

「グランド・トライン!」
フェーリは両腕を広げてバッとそのまま下に下げる。すると、大きな星が三つ重なって私の方へと向かってきた。
フィールドいっぱいに広がる三つの星。これじゃ避けられない。バリアを張るかどうするか迷ってる場合ではなかったが、この攻撃を無傷で受けられるほどのバリアはきっと張れないだろう。
「ッ!!」
そうこうしているうちに、詠唱が間に合わない程近くに星が接近していた―――

ドシャッ!!
後方―フィールド外の大木に星がぶつかる。それと同時に辺りは砂埃にまみれた。
「ユリア!!」
りんごが悲鳴に近い声を上げて大木の方へと駆け寄る。
「けほっけほっ…ユリア!どこ!?」
さすがに今のはやりすぎだろうと思ったのか、りんごはフェーリをキッと睨む。しかしフェーリは痛くもかゆくもないといった表情で不敵に笑っていた。
「運命なのよ」
口癖のように、今日何回目かのそのセリフを言い放つ。
砂埃が一陣の風によって追い払われていく。もう誰もがフェーリの勝利を確信していた。
が、
「なっ、なに!?」
砂埃を追い払った風が、フェーリに向かって攻撃を仕掛けてきた。彼女はそれを避けきれず、もろに喰らって後方に吹っ飛ぶ。ケホケホと咳き込みながら風が飛んできた方に目線をやる。風が自分に向かって襲いかかってくるなんて予想だにしなかっただろう。
だって、『その術を使う者は倒したと思っていたから』。
「私は…負けない!」
完全に砂埃が晴れると同時に私は立ち上がる、先程私が立っていた場所とまったく同じ場所に。
「ど、どうして!?だってアナタは…!」
フェーリは明らかに動揺している。それは周りの観戦者も同じだった。
「ユリア、なんで!?」
後方の大木からりんごが私に問いかける。
「下にあった隙間をくぐって避けた…としか言いようが」
一か八かの大勝負だった。ここは運に賭けるしかないと思ったので、私はあの時地面に伏せた。下方に見えた少しの隙間…それこそ人一人入れるか入れないかの隙間。あっという間の出来事だったので、他の人には私が星に押されて後方の大木にぶつかってしまったように見えたのだ。
それを聞いたフェーリはムッと不機嫌そうに顔をしかめる。
「ありえない…ありえないわよ、こんなの!」
ここで一気に決めてしまおう。