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淡々と、本当に『優勝』という目的だけをそこに据えて彼女は私と対峙する。いくら修行を積んでも、相手の一手を読むことができなければ、それは無意味となる。
「ステリウム」
彼女のダウジングロッドがクイッと上に向かって反応する。それに釣られて私も上…空を見上げた。
「…わッ!?」
空から降ってきたのは…無数の小さな星。黄色くやたらとファンシーなまさに絵に描いたような感じのそれは私に向かって一直線に降り注ぐ。
先が尖ってるから、掠っただけで痛い。ところどころに掠り傷を受けながらも私は星の降り注ぐ地帯から走って逃れた。
「…そろそろ懲りたでしょ?ギブアップしたら?それがアナタの『運命』なのよ」
まただ。『運命』。
フェーリの言う『運命』。それは私がここで負け、彼女が優勝するというもの。正直言って都合のいい言い訳にしか聞こえなかった。
もし、それが本当に『運命』だったとしても…私は抗ってみせる。そうしないと、今までやってきたことが意味のないものになってしまうから。
「ギブアップなんて…絶対にしないッ!私は、あなたに意地でも勝ってみせる!」
「…運命には逆らえないわ。アナタがそう喚いたとしても、ヨ」
そろそろその『運命』という単語にもイライラしてきた。
「運命って何。あなたが私に勝って、あなたが優勝すること?」
「そうよ」
「それなら…その運命、私が打ち破ってみせる!」
先程まで薄笑いを浮かべていた彼女の目が、大きく見開かれた。しかしそれもほんの一瞬のこと。次の瞬間彼女は力が抜けたかのように顔を俯かせ、両腕をだらりと下げた。
だがそれも束の間のことだった。彼女は『ククッ…』と笑い、肩をふるふると震わせる。
「ククッ…クククッ…運命を打ち破る、ですってぇ…!?」
ワナワナと、フツフツと、彼女の怒りのボルテージが上がっていくのが嫌でもわかる。これには観戦者も思わず身震いしていた。
次の瞬間、フェーリは鬼のような表情をした顔を上げ、だらりと下げていたダウンジングロッドをジャキリと構えた。
「キエェェェェェェェッ!!!」
けたたましい叫び声を上げながら、彼女は私をギッと睨みつける。
「この運命は!誰にも邪魔できないしさせないわ!!」
ものすごい迫力。どうやら本気にさせてしまったようだ。