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朝起きたら学校に行って授業受けて、帰ったらサタンやアミティと一緒に魔導の修行をみっちり。
りんごの方も私が学校に行ってる間はサタンといろんなところに行って、元の世界での出来事を書き換える方法を虱潰しに探す。
そんな日々が続いていた。私の方は着実に実力がついてきているが、りんごの方はさっぱりのようだ。
「うーん…」
りんごが『考える人』のポーズをしながら唸ってる。
「うーーん…」
「あ、あの…りんご。大丈夫?こないだからずっと…」
ずっとこの調子。どうやら状況は思ってる以上に悪いようだ。
「安心して、ユリア。私が絶対見つけるよ」
「でもやっぱり、無理は良くないよ」
どう見たって今のりんごは無理してるようにしか見えない。私のために、と思ってくれるのはとても嬉しいこと。しかし、それでりんごが無理をしたりするのはやっぱり心苦しいのだ。
何かいい方法はないだろうか。このままだとりんごはまた明日にでも虱潰しに『ユリアのため』と言いながら歩き続けるだろう。それを続けたら、りんごは確実に倒れてしまう。
「そうだぞ、りんご。休憩だ休憩。ユリアも休憩しろ」
二人揃って考え込んでいると、いつのまにか近くに来ていたサタンが私とりんごの横に立つ。しかし……
「な、なにその格好……」
一瞬引きそうになった。だってサタンの今の格好は…サングラスにアロハシャツ、そしてウクレレ装備というまさに『南国の男』といった感じの格好だったから。
私たちが引いていることにも気付かず、その男はジャカジャカとウクレレをかき鳴らす。
「そういうわけで、明日は海に行くぞ!あ、お前たちの水着は用意してあるから心配するな」
一体どういった経緯でそれに至ったのかわからないが、彼なりにりんごのことを気遣っているようだ。多分、彼はりんごと共に同じことを調べているため、りんごがどれほど疲れているのかを知っているのだろう。
「女性の水着を持ってるんですか?…さては、とんでもない変態…」
「えーいっ黙れ!この日のために用意したんだから変態って言うな!」
…まぁ、サタンは変態っていうのは正解だと思うけど。っていうかその格好だと変態三割増なんだけど。
けど、気持ちはとても嬉しかった。りんごは切羽詰まって爆発寸前だっただろうし、私もここ最近は魔導のことしか考えられないくらいにはみっちり修行をさせられていた。
「まぁまぁりんご。たまには息抜きも必要だよ。海、行こう?」
サタンに向かって『変態』を連呼するりんごをなだめる。せっかくなんだから、この世界の海にも行ってみたい。それに、これもここの世界での思い出にしておきたかった。今度こそ、忘れないように。
戸惑いながらもりんごがコクリと頷くのを見て、私とサタンは顔を合わせてニッコリと笑ったのだった。