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放課後。
アミティと一緒にりんごを探そう、ということになったので昇降口から出てくると、目当ての人物は既にそこにいた。
「りんご!」
「ユリア!…あ、そこにいるそこはかとなく変態なサタン『さま』に言われてここに来たんだ」
りんごがサタンを指差す。それを聞いたサタンがまた何か文句を言い始めたが、アミティが苦笑いするだけのリアクションに終わった。
「…それで、話っていうのは何?」
きょとんとしながら問いかけるりんご。
早く言いたい。言いたいけど、緊張して上手く言葉が出てこない。一旦深呼吸をして、心を落ち着かせる。

「あのね、」
言いたいんだ、とても。早く伝えたいんだ、あなたに。
「思い出したの。りんごやまぐろくん、りす先輩と過ごした日々」

言えた。スッと心が軽くなって、なんだかすっきりした気分になる。
けど、りんごはそれを聞いた瞬間ポロポロと涙を流した。今朝の私みたいに。そしてギュッと私に抱きつく。
「思い出して…くれたんだね。嬉しいよ、とっても」
泣きじゃくりながら、私の顔をしっかりと見る。
「思い出してくれて、ありがとう。まぐろくんもりす先輩も、きっと喜んでるよ」
泣きながら、でもニッコリとあの時と変わらない笑顔を見せてくれた。
これで後は、帰るだけ。

でも、もし帰れたとしても……私はやっぱり、りんごとお別れしなくてはならなかった。だって私は、転校することになってしまっているから。転校して、遠くに離れてしまって、電車でもっと時間の掛かるところまで。
そのことはきっと、りんごも知ってるはずだ。でも、彼女はそれを言わなかった。

なら、今この時間を、目一杯楽しもう。
りんごやアミティ、サタンといれるこの時間を大切にしよう。せめて、帰る方法が見つかるその時まで。