――― 金魚すくい、わたあめ、くじびき、やきそば、りんごあめ、お面屋、かき氷、…… 夏祭りならではの出店が立ち並んでいる通りを四人で練り歩く。先程まぐろくんが金魚すくいで10匹すくうという快挙を成し遂げ、りんごがかき氷を食べて頭痛に悲鳴をあげるなど、今年の夏祭りはそれだけでも忘れられない思い出ができた。 私は今まで消極的な性格というのもあって、なかなか友達ができなかった。だから、こうして友達同士で遊びに出掛けたりすることなんて滅多になかった。 始めはなんとなく入った物理部だった。でも、この部活に入って良かったと思っていた。だって、こんな私の人生を、この三人が変えてくれたから。 ふざけながら歩いてる三人を、なんとなく少し後ろから眺めてみる。私には、この三人が輝いて見えた。本当に仲がいいんだな。だから、少しだけ、『私がこの輪の中にいていいんだろうか』と思ってしまう。 そうしていると、ドーンと花火の打ち上がる音が聞こえた。途端、ぐいっと手を引かれる。 「花火が始まったよ!行こう!」 りんごが私に向かって微笑みかける。そして私の返事を聞く前に、私の手を引いて走り始めた。 慣れない下駄だから、走りにくい。でもそんなのお構いなしにりんごは出店の通りを走り抜けていく。私も転ばないように、彼女に引っ張られながら走った。 「りんごちゃーん、ユリアちゃーん、こっちこっち★」 まぐろくんとりす先輩が待ってる。そのバックには綺麗な花火。 そうだった。いつもりんごが、私を引っ張ってくれた。消極的な私をいつも導いてくれた。 「りんご」 花火を見ながら、隣いる彼女の名前を呼ぶ。 「いつもありがとう」 何かお礼をしなくては、と思った。でも、まずは『ありがとう』の気持ちから。それからでも遅くはないはずだよね。 彼女はこちらを向くと、『どういたしまして』と、いつもと変わらない微笑みで返してくれた。 ← → |