――― 「どう?」 エコロは黒い玉をジッと見つめるりんごに問いかける。 そこに映っていたのは確かにユリアだった。服は変わっていたが、…間違えるわけがない。どこからどう見たってそれはユリアだった。しかも、動いてて、喋ってる。 彼女は確かに『生きてた』。でも、どうして? 「ユリアちゃんが今いるのは『プリンプタウン』。りんごちゃんも行ったことあるよね?」 その地名には聞き覚えがあった。自分の異世界の友達、アミティやアルルがいる場所だ。でも、どうして? 「こっちの世界ではユリアちゃんは確かに『死んだ』よ?でもね、彼女の魂は時空を超えてプリンプタウンに来ちゃったんだ。そしたら向こうの世界のおじさまがユリアちゃんの魂に魔力をあげちゃって…そのおかげでユリアちゃん復活!新しい人生を送ることになったんだ!」 やけにテンション高めにエコロが説明する。そして更にこう続けた。 「ユリアちゃんは今魔導師目指して勉強中〜!あの子はすっごい魔導師になれるよ!だって、もう魔力を使いこなしちゃってるんだもん!」 りんごは思った。すべてがエコロの作り話ではないのかと。だってユリアは普通の学生だ。今の映像だって、エコロが捏造したものかもしれない。全部がエコロから得た情報。そう簡単に鵜呑みにはできなかった。 かといって、ユリアのことを諦めるのも嫌だった。だって彼女は、りんごの大切な友達だから。今そこにユリアがいるのなら。だったら、 「……てよ」 「え?」 ハイテンションな説明を続けていたエコロが聞き返す。りんごはしっかりエコロを見据えて、もう一度言い直した。 「連れてってよ。ユリアのところに。自分の目で確かめないと気が済みません」 りんごにとってその願いは、捨て身の願いだった。自分の敵も同然の存在にこうしてお願いしているのだ。騙されて変なことをされるかもしれないとも思った。 でも、それ以上に、ユリアに『会いたい』という気持ちの方が強かった。 そして、それをエコロも受け止めていた。彼女が本気であると、そう感じていた。 「…いいの?戻れないかもよ?」 黒い影は念を押してみる。自分は時空の旅人であり、彼女を元の世界に戻せるという保障はできない。 しかし、彼女はニカリと笑った。 「私は必ずユリアを連れて帰ります。その方法も自分で探せばいいし、でも、あっちに行くためにはエコロの力が必要かも」 りんごは覚悟を決めていた。必ず自分の友達をこっちに連れて帰ると。 気が付くと、そこは森。多分無事にプリンプタウンに辿り着いたのだろう。りんごはむくりと起き上がると、自分をここに連れてきたエコロを探した。 しかし既にその姿はなく、森独特の静寂があたりを包むだけだった。…エコロを探してもしょうがない。 りんごは気を取り直すと、自分の友達であるユリアを探して歩き始めた。 ← → |