―――

「で、」
放課後。アミティと喋りながら昇降口から外に出た私は、傍から見てもわかるくらいに露骨に嫌そうな表情をしてみせる。
「迎えに来たぞー、ユリアー」
お花を辺りに散らすエフェクトが見える。その男、間違いなく今朝の変態おじさん基サタン『さま』。
「なんでサタンがいるのさ!」
「『さま』をつけろ、『さま』を!」
『さま』なんてつけてやんないし、迎えなんて頼んだ覚えないし、回復早えよ。普通は全治三日とかそんな感じじゃないのかよ。その回復力は、やはり彼が普通の人間ではないことを証明していた。
「こほん、まぁいい。照れてるだけならそれでいいんだ。さぁ、早く帰ってあんなことやこんなことを」
「アミティごめん、先帰ってていいよ」
こんな話、まだ彼女には聞かせるわけにはいかない。そう思った私はアミティの方を振り返った、が。
「ユリア…もうあのおじさんと…あーんなことやこーんなことしちゃってるのー!?」
「しちゃってたりしてなー!あっはっはっは!」
キャーキャーと赤くなるアミティ。そしてそれに便乗して高笑いを始めるサタン。ダメだこいつら、早くなんとかしないと。
「そーゆーことなら仕方ないよねー!あたし先に帰ってるよ!」
「ちょっ、それ誤解だから!してないから!そういう関係じゃないから!」
慌ててアミティを呼び止めようとしたが、彼女は風のように去っていってしまった。そんな…そんなバカなことがあっていいの…?
「では行こう。私たちの楽園へ!」
そうやって絶望してるうちに、サタンにひょいっと抱き上げられる。しかもお姫様抱っこだ、これは。まずい。これは限りなくまずい状況だ。
「楽園って何!じゃなくて、降ろして!降ろしてー!」
「暴れると落ちちゃうぞー」
頭の中お花咲き乱れてそうなおじさんから離れるべくジタバタと暴れて抵抗を試みるが、そんなの痛くも痒くもないといった感じでサタンは背中にある翼で羽ばたき始めた。
「ぐあーっ!!降ろせ!!」
「ぐべっ!!」
我慢できなくなった私は、カバンから図書室で借りてきた魔導の本を出してスパコーン!と彼の頭を殴ってしまった。なんだかとっても気持ちのいい音がした気がする。
すると彼はばたんきゅー…とぶっ倒れてしまった。私もそのまま倒れてしまったけど、すぐに起き上がったから問題なし。
「なんだかいい音したね、サタンバリン」
しゃがみ込んでつんつんとほっぺをつついてみる。ちょっと柔らかい。たこ焼きみたいだ。