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「えっとー…まずここを、曲がって…それから……」
地図を片手に学校を目指す。そういえば元いた世界の学校の入学式の時にも、こんな風にして学校を目指したのを思い出した。あの時は友達もおらず、一人で不安だったなぁ……今となっては元いた世界の人間関係をあまり覚えていなくて少し寂しい、という複雑な心境だった。
排気ガスのない綺麗な空気を胸いっぱいに吸い込んでみる。空気には味があるって本当のことなんだ。とても新鮮で美味しい……
「ユリアー!おっはよー!」
新鮮な空気を味わっていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「アミティ、おっはよー」
振り返って確認すると、そこにいたのはやはりアミティ。彼女も今から学校なのだろうか。意外と早くから学校に行くんだな。
「いやぁ、今月もう遅刻何回もしちゃってて…今日からしっかり来ないと廊下に立たされちゃうんだー」
えへへー、と苦笑いしながらアミティは私と一緒に歩き始める。なるほど、そういうことだったんだ。廊下に立たされるとは、結構古いやり方の先生なんだろうな。厳しくないといいんだけど……
「確かユリアは、私と同じクラスになるんだよね!シグも一緒のクラスだし、これからもっと楽しくなるかも!」
アミティと同じクラスになる、というのは初耳だったけれども、アミティが楽しそうだからまぁいっか。隣でウキウキしてるアミティを見ていると、かわいい妹ができたみたいでなんだか微笑ましくなる。今朝のちょっとした騒動のおかげか、私は心の底から癒されたのでした。

「今日から新しくこの学校に入学した、ユリアさんです」
朝のホームルームで先生―『アコール先生』というらしい―が私の紹介をしながら黒板に私の名前を書く。
「初めまして、ユリアです。ここには初めて来たので、わからないことばかりだけど…よろしくお願いします」
簡単に自己紹介しながら頭を下げると、教室中から歓迎の意味の拍手がパチパチとたくさん聞こえた。それがなんだか気恥ずかしくて、頬をかく。
先生に案内された席は、シグとアミティの間の席だった。私は二人に改めて『よろしく』と挨拶すると、席の前後の生徒にも挨拶をしておいた。やっぱり挨拶だけはきちんとね。
「では、授業を始めます」
今日の授業は魔導の基礎。私のために、そして生徒には基礎をしっかり固めるという意味でやるようだ。


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