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朝食を食べた後自分にあてられた部屋に戻ってくると、サタンが用意したというセーラー服を眺めた。
『セーラー服の方がかわいいに決まっているだろう』
昨晩の彼のセリフが蘇る。どういう趣味だよ、というか、なんでアンタがそんなモン持ってるんだよ、など、ツッコミどころは計り知れない。
元々向こうの世界にいた時の制服があるのだからそれでいいじゃないか…とも思ったけど、しかしせっかく用意してくれたのに申し訳ないかも、という気持ちにもなり。
「こんな感じでいいのかな…」
鏡を見ながらスカーフをキュッと結ぶ。そのままくるりと回ってみて、スカートをひらひらさせてみる。サタンがこの場にいたらなんて言うだろうか。
「似合ってるじゃないか…ユリア」
想像しただけで萎えた。鮮明にボイスつきで再生され……ん?
「うわあああああッ!?」
今まで自分の姿が邪魔で見えなかったけど、鏡越しに扉の隙間からこちらを伺っているサタンの顔が見えて思わず後ろを振り返りながらズザザザッと後退る。
「何もそんなに驚くことないじゃないかぁ。私の見立ては間違っていなかったな」
フッと笑いながらグッと親指を突き立ててる。こいつ、いつから見てた!?
「ずーっと見てたぞ。何気にいい身体…ククッ、今夜が楽しみだな、ユリア?」
まるで私の心の中を見透かしたかのようにドヤ顔でとんでもないことを口走りながらニヤニヤ笑ってた。
ああ、なんだか頭の中すんごい楽しいことになってそうだ。その頭の中すんごい楽しいことになってそうなおじさんにさっきの感覚を思い出しながら殴りかかってみた。
結果、彼は城の壁を突き破って空の彼方へ飛んでいってしまった。
これから毎朝こんなんだったら嫌だな……願わくば今日限りにしてほしいと思いながら、これまたサタンが用意してくれたプリンプ魔導学校の教科書をカバンにつめて学校に向かって出発したのだった。


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