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目を覚ましたら何故か、私は南国にいた。
だって、このロケーションは絶対南国に違いない。
青い空、白い雲、寄せては返す波と、どこまでも続いていそうな海。そして綺麗な砂浜に、立派なヤシの木。
最初は夢でも見ているのかと思って、ほっぺを自分でも痛くなるほどつねったんだ。ギリギリッと。
ついでに手の甲にも爪を立て、髪の毛を引っ張った。ギリギリッと。
そしたら何故か目の前にいた顔の血色の悪い、やたらと長いストールを巻いた男子に話しかけられた。
「問おう。貴様が俺様のサーヴァントか?」
サーヴァント?はて、何のことやら。
「俺様の儀式が成功してしまったか…クク、運が良いのか悪いのかわからんが、これで俺様の力がやっと認められるな」
その男子はペラペラと独り言を喋り、相変わらず砂浜に座り込んでいる私を無理矢理立たせる。
「来い。皆に知らせなければな」
知らせる?皆?
「えっ、ちょっと待ってください。どういうことですか?貴方誰ですか?というか、ここはどこですか!?」
ここで私はようやく口を開くことができた。なんだか本当によくわからないことばかりで、ただでさえ頭の中はぐちゃぐちゃなのに、この変な男子のせいで余計に混乱してしまってた。
だけど戸惑っている私を無視するように、男子は私の腕を掴んでズンズンと歩を進める。そんな彼の後ろを、私は早足でついていった。

ここで、私がこの南国に来る以前のことを振り返ってみよう。
まず、私が学校の部活が終わって帰宅したところからだ。
私は部活で疲れてしまったためか、自分の部屋に戻ってくると制服のままベッドに寝転んで眠ってしまった。
そして次に目を覚ましたら、何故か南国にいた。
以上。

「…なんでいきなり南国に。しかもこれは夢なんかじゃないんだよね。じゃあなんなんだよ一体…」
あまりにも簡潔すぎる南国に至るまでの経緯を思い返してブツブツと呟いていると、いつのまにか足の裏の感触は砂浜のそれとは異なるものになっていた。
「うおっ」
「なんだ貴様、階段も昇れんのか?」
不意に躓いた段差。いつのまにか立派なプールつきのホテルの前まで連れてこられてて、そこの外側の階段の前に私達はいた。
私の腕を掴んでいる男子はその階段を一段昇ったところで、私を見下ろしていた。ただでさえ身長差があるのに更に高いところからその三白眼で見下され、否定の意味で首を横に振ってからその威圧感に押されるように彼の後をついていった。

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