ひとまず話し合おうということになり、レストランの大きなテーブルを挟んで皆で座る。そこでされた話をまとめてみると―――
ここは『ジャバウォック島』というリゾート地、だけど今は無人島だということ。
私を除く他の皆はここに『修学旅行』に来たということ。
マスコットキャラクターみたいなウサミは、この修学旅行の引率の先生だということ(とてもそうは見えないけど…)。
この修学旅行の目的は、『皆で仲良くこの島で過ごすこと』だということ。
そして、皆は『希望ヶ峰学園』というところの生徒だということ。
―――ってことがわかった。
でも、『希望ヶ峰学園』だなんて学校、聞いたことがない。どんな学校なんだろう?
「それで、キミは本当に田中くんに召喚されちゃったの?」
考え込んでいると、リュックを背負った女子に声を掛けられる。その問いかけに答える前に、私の隣に座っている長いストールを巻いた男子―田中くんという人が先に口を開く。
「当たり前だろう!先程も言ったが、此奴は俺様の描いた魔法陣の上に現れたのだ。これを召喚と呼ばずに何と呼ぶ?」
田中くんはどや顔で言い放つ。確かに、私は砂浜で目を覚まし、そしてその場にはこの田中くんしかいなかった。ということは、やっぱりそうなんだろうか。それに、なんか頷いておいた方が楽に事が進むような気もする。
「…本当に、そうなのかな」
リュックを背負った女子が、ジッと私を見つめる。
「私にも事情がよくわからなくて…もしかしたら、多分…そうなのかもしれない」
この女子以外の視線も集まる中で、緊張もあってか私は曖昧な返事しか出来なかった。
「まぁ!それでは、田中さんの力は本物なんですね!すごいですよ、田中さん!」
王女のような気品が溢れる女子がキラキラのおめめを田中くんに向ける。その途端、田中くんは耳まで真っ赤にしながらストールで顔の半分以上を隠してしまった。
あ、照れてるんだ…。そう思って間もなく、ピンクの髪でツナギの男子が反論し始める。
「いやいやいやいやそれはありえねーって!なんでそうなるんだよ!?科学的じゃねーだろ!!」
「けど、それ以外の可能性なんてやっぱり考えられないし…」
「…じ、じゃあ、お前は本当に田中に召喚されて来た…ってことにしてもいいんだな?」
リュックの女子とアンテナ男子が私を見る。
「多分…」
またもや曖昧な返事になってしまった。でも、今の私には断定的な返事はできない。隣で「やはりな」と呟く田中くんはとりあえず無視の方向で。
「ウサミちゃん、この場合は…色々な意味でどうなるのかな。たとえば、彼女の寝泊まりする場所とか…」
リュックの女子がウサミに視線を向ける。そのウサミもむむむ、と考え込んでいた。
「こんなことになること自体が、想定外でちたから…その子の分のコテージは用意できてないんでちゅよ。電子生徒手帳なら何とかなるかもちれませんが…」
申し訳ありまちぇん、と謝ってくるウサミにどんな顔をすればいいのかわからず、思わず愛想笑いを浮かべる。
「とにかく、電子生徒手帳は用意しまちゅから、ここで皆ちゃんと修学旅行を楽しんでくだちゃい!」
……え?
「修学旅行を楽しんでください、って…」
「見た感じ、有害な雰囲気はありまちぇんし…残念ながら、貴方を元の場所に帰す方法もわからないので…皆ちゃんと修学旅行を楽しんでくだちゃい!」
「えっ、ちょっと待って、いきなりそんなこと言われても」
どうすればいいのかわからない。そう言おうとした声はもう一つの声によって阻まれてしまった。
「田中さんの力が本物だとわかっただけでもすごいのに、そのサーヴァントさんと一緒に生活できるなんて!ドキがムネムネ致します!」
王女のような気品溢れる女子が、先程田中くんに向けていたのと同じキラキラのおめめを私に向けていた。…ってか、そのネタはいいのか?
それを皮切りに色々な声があちこちから上がる。
「…まぁ、変わった奴らが多いけど、皆いい奴だから。大丈夫だと思うぞ」
そんな中、アンテナ男子が私のすぐ隣まで来る。そして、握手を求めるように右手を差し出した。
「俺は日向創。皆に比べたら平凡な奴だけど、よろしくな」
「…私、神楽琉花です。よろしくね、創くん」
アンテナ男子―日向創くんの手をしっかりと握り握手を交わす。
それが、私のここでの生活の始まりだった。

☆だんがんアイランドへようこそ!【END】

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