「お、田中。お前が一番最後だぞ。材料は集まったか…って」
その先はレストランになっていて、十数人の男女が集まっていた。その中のアンテナのように立った髪が特徴の男子が、私を引っ張ってきた男に話しかけたが、その後ろにいる私を見てピシリと固まった。
「だ、誰だよ、そいつ…」
アンテナ男子の困惑した声に、他の人達の視線が一斉にこちらに集まる。
「オ、オメーなんで女なんて連れてんだよ!?」
「と、いいますか…ここって無人島、なんじゃありませんでしたっけ…?」
「おい、田中…!そいつをどこから連れてきた!?」
ピンクの髪でツナギな男子、おどおどした包帯をたくさん巻いた女子、太り過ぎだろってくらい太ったメガネ男子など、未だに私の腕を掴んだままのやたらと長いストールを巻いている男子に負けず劣らず個性豊かな面々ばかりがそこにはいた。
次々に浴びせられる問いかけを物ともせずに、やたらと長いストールを巻いた男子はフッと得意げに笑う。
「クク…此奴は俺様が喚び出した、俺様のサーヴァントよ。何しろ俺様の描いた魔法陣の上に現れたのだからな!!」
その後も彼の長くて中二病な話は続くが、それがどんな内容だったかなんてどうでもいい。
召喚された?私が?彼に?
どう考えたっておかしいでしょ。ゲームの世界じゃあるまいし。
…いや、ひょっとしたら?
真面目に考え込む私の思考をぶった切るように、その声は聞こえた。
「はは、やっぱり田中クンはすごいね!…それで?本当はキミは、どうやって来たの?罪木さんが言った通り、ここは無人島だってボクらは聞かされてたんだけど…ウサミの見当違いだったのかな?」
裾がギザギザのパーカーを着た男子が私をジッと足元から頭まで見つめる。本当に召喚されてきたなんて信じたくないし、じゃあどうやって来たのかなんて私が訊きたいくらいだったけど、それよりも気になったのが…
「ウサミ…?」
どこかのマスコットキャラクターのような、その名前だった。
「はいっ、あちしでちゅ!」
私がその名を口にした途端、また別の声が聞こえた。妙に高くてかわいらしい声。でもそれがどこから聞こえたのかはわからなかった。
「えっ…えっと…?」
キョロキョロと辺りを見回す。一眼レフのカメラを首から提げた赤毛の女子、シェフのような格好をした背の低い男子、竹刀袋を背負ったメガネ女子、まるで王女のような気品を持つ女子、…と、顔ぶれは本当に様々。その誰もが共通して、私の足元を見ていた。
「こらーっ!ここでちゅよ!」
また先程と同じ声が足元から聞こえる。慌てて一歩引いて視線を下に向けると、本当にマスコットキャラクターのような二足歩行のウサギがいた。
「貴方誰でちゅか!?さてはモノクマの手先でちゅか!?」
「モ、モノクマ?」
「ええーい、問答無用でちゅ!このっこのっ」
依然としてハテナマークを浮かべる私に、そのマスコットキャラクターは持っているステッキで私の足を突っつく。正直に言うと、痛くも痒くもなかった。
でもその様子に不思議と愛らしさが込み上げてくる。けども、……
「あ、あの…モノクマって?それと、ここは一体どこなんです?…一体何が起こってるんですか…?」
急にこの場所にやって来た私には、まったく今の状況がわからなかった。