――― 今日、部屋の模様替えをした。 隣の部屋のお兄さんに手伝ってもらったから、今度何かご馳走してあげようかな。 その時に、ゲームが大量に出てきた。いい機会だし、やらないのはごっそり売ってしまおうかな。 「あー…なんかハマったな」 懐かしいな。色々なゲームやったんだな、私。 「あ」 眺めてると、割と最近のゲームのタイトル。 「ポケモンか」 一年前くらいに出た完全新作のやつ。確かシナリオクリアして、ちょっとやった後放置したやつだ。 これ売ったら結構お金になるのかしら。 でも、このシリーズは初代からずっとやってきた。なんとなく手放してしまうのは惜しい気もする。 「どこまでやったっけか……」 売るゲームはまとめて袋に入れた後、ベッドにごろ寝してDSにポケモンのDSカードを差し込む。 電源を入れると、そこはもうポケモンの世界。 ―― 久しぶりに電源の入る音がした。 一年ぶりくらいかな。気だるそうな女の子の声がDSのマイク越しに聞こえる。 『あーっ…思い出した。バトルサブウェイだ。…ダブルトレイン?…あぁ』 きみのことを忘れたことはないけど、会ったことない。おかしいよね。 でもそんなことより、きみがまたこのゲームを始めてくれたことの方が嬉しい。 『ってことは、次ってボス的なやつだっけ』 そう。きみはぼくのところに来る直前でゲームを放置しちゃってた。 でも、ぼくはずっと待ってた。またここに戻ってきてくれるって信じてたから。 そんなことを思ってると、トウコちゃんの姿をしたきみがこの車両に入ってきた。 『わ、白い』 初めまして。 「ぼく、クダリ。サブウェイマスターしてる」 テンプレートな言葉しか言えないの、すごく残念。 この気持ちをきみに伝えられたらって思う。 ずっと待ってた。でも目の前で焦らされた。一年も待った。そして今、きみはそこにいる。 伝えたくて仕方ないんだ。 ―― 「うえー、負けた。なんだっけ、クダリ?強すぎる」 『ぼく、クダリ。きみに勝てちゃった』 「しかもこの喋り方…ロボットなのかなぁ、コイツ」 思ったことが口に出るくらい異様な奴だ。元々ダブルバトルは得意じゃないし、久しぶりにやったから勘も忘れてる。でも、そんなことよりこのDSの上画面にいる白い奴の方が気に掛かった。 なんだ、このクレイジーホワイトは。 一年前にシナリオ進めた時にNの部屋がこわいと感じた時のような異様さと不気味さを兼ね揃えてる。 そんなに幼いようにも見えないのに、この口調。なんかヤバい。 なんか、このまま負けっぱなしになりそうな気がするけどそれはちょっと嫌だ。 「ポケモン、始めよう」 打倒クダリで、私のポケモンは再び始まった。 事件が起きたのはそれから少し後のことだった。 × / → |