―――

「だ、誰!?」
その男の人、誰!?なんでミコトのDSいじってるの?
『え、あ、…え、サブマス…だよな?えっ』
男の人はぼく達のこと知ってるみたい。
ん?でも、この声聞いたことあるかも。確か、ちょっと前に。
「…ひょっとして、ミコトさまの隣人のお兄さまでは?」
『わ、ノボリもいるのか!』
そういえばそうかも。テンションも声もあの時聞いたのと一緒だ。でもどうしてそのお兄さんがミコトのDSいじってるの?っていうか、ミコトは?
「ねぇ!ミコトは!?」
未だ状況が飲み込めてない様子のお兄さんに掴みかかる勢いで聞いてみる。
『……あー、…ミコト……』
ねぇ、なんで黙ってるの。なんか言ってよ。ミコトに何もなかったって言ってよ。そもそもきみはミコトがどこに行ったのか知ってるの。知らないなら早く電源切って。とにかくなんでも良いから黙るのやめて。
冷や汗が流れる。心のなかにはどす黒い何かが流れる。どうして何も言ってくれないの。
お兄さんはもう一度ぼく達を見た。そして、教えてくれた。
『…ミコトは、交通事故に遭って。今、病院にいる』

交通事故。
なんでも一週間前、登校途中で車に轢かれたらしい。

「そ、んな……」
顔から血の気が引いていくのが自分でもわかる。
あの元気だったミコトが。あのいつも話してたミコトが。ミコトが。ミコトが。ミコトがミコトがミコトがミコトがミコトが。
『…っあ、でも!死んじまったわけじゃないから!な、泣かないで、くれますかね…?』
ボロボロと大量に涙が出てきた。泣かないで、と言われても、そんなの無理だよ。
気付くこともできない。駆けつけてやることもできない。
「きみにぼくの気持ちがわかるの!?」
思わず叫んでしまった。画面の向こうのお兄さんも面食らった顔をしていた。でも、ぼくはその時何も考えられなかった。
「きみにぼくの痛みがわかるの!?」
『…あ、えっと……』
「答えてよ!!無理なんでしょ?無理なんだよね!?だからそんなこと」
そこまで言った時、誰かにライブキャスターをひったくられた。
「クダリ!落ち着いてくださいまし!」
ノボリだった。ノボリはぼくに一喝すると、ライブキャスターと向きあう。
「…連れて行ってくださいまし」
『…え?』
「ミコトさまのところに、わたくし共を連れて行ってくださいまし」


【続】

戻る

/