―――
――

「あー、やっと終わった!」
やっと書類整理が終わって一息つく。隣のノボリも同じくふぅ、と溜息をついていた。まったく、ノボリが書類を溜めるからこうなるんだ。
「溜めていたのはあなたです」
「まだ何も言ってない!」
まるでぼくの思ってることを読んだみたいに(というか絶対読んでる)、ノボリはじとっとした目をぼくに向けていた。ちょっとノボリこわい。
ま、それは置いといて。早くミコトと話がしたいな。そう思って着信音が鳴らない設定にしてあったライブキャスターを取り出す。
「あれっ」
と、着信ランプが光ってた。
「どうしました?」
「誰かから着信があるみたい」
誰だろう。ぼくはライブキャスターを確認してみた。
「ミコトからだ!」
液晶に浮かぶ「ミコト」の文字。ミコトからぼくにかけてきてくれた!躊躇うことなんて何もない。ぼくはすぐさま通信を繋いだ。
「ミコトー!今仕事終わったの!」
繋がった瞬間にそう言って手を振ってみたけど、返事がない。屍のようだ。じゃなくて、なんで返事がないのかな。あんまり待たせたから怒らせちゃったかな。それとも気付いてないのかな。まだ映像の方が繋がってないみたいだからよくわかんない。
しばらく待ってみると、映像の方が繋がった。そこに映っていたミコトを見て、ぼくもノボリも一瞬驚いた。
「…ミコト、寝ちゃってる」
一瞬本当に死んでるのかと思った。ミコトはライブキャスターのカメラに向かって寝顔を晒しながらぐっすり寝ていた。
「どうやら長い時間お待たせしてしまったようですね。毛布をかけて差し上げたいですが……」
ふむ、とノボリが考え込んでしまった。ぼく達は毛布をミコトにかけてあげることすらできない。いつも思うけど、この距離感はとてももどかしかったし、悲しかった。
「…どうして、」
どうして繋いでしまったんだろう。後悔なんてしない、はずだったのに。


【続】

戻る

/