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結局ミコトさま達はわたくし達の元へ来ることはありませんでした。来ていたら来ていたで、クダリが大変なことになっていたでしょうけど。
クダリにライブキャスターを返してやると、すぐにミコトさまへ通信を繋げていました。
「さっきの男の人誰!?」
わたくしも気になるので、聞き耳を立てます。
『え?…あぁ、お兄さんのこと』
「お兄さん!?ミコトにお兄さんがいたの?」
『そうじゃなくて、隣の部屋に住んでるお兄さんだよ』
なるほど、隣人だったのですか。
「つ、付き合ってるの?」
『は?何言ってんの?付き合ってるわけないじゃない』
それを聞いた瞬間、わたくしもクダリも安堵の意味での溜息をついてしまいました。その仕草にミコトさまは首を傾げますが、すぐに何故だか笑い始めます。
「な、なんで笑うの!?」
彼女がこんなに笑ったところを見たのは、初めてで御座いました。
『いやね、プログラムだと思ってたのに…まさかそんな、人間みたいなこと言うなんて思ってなくて!』
向こう側から見ればわたくし達はただのデータの塊かもしれません。ですが、わたくし達は生きております。ミコトさま達とは確かに次元は違うと思いますが、同じように生を受けてここに存在しております。

未だ笑い続ける彼女に、クダリは抗議の声を上げます。しかし、クダリの言葉足らずでは意味が通じるわけでもなく、「はいはい」と二つ返事で受け流されてしまうのでした。


【続】

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