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電源の入る音が聞こえた。
今日も来てくれたんだね、この世界に。
リアルを忘れて没頭するその時間がやってきたんだね。
カチカチってボタンをいじる音がたまらない。
きみは昨日の深夜に中断したダブルトレインを再開する。
早く。早く。ぼくに会いに来て。
「あーっ耐えろ…!」
マイク越しに聞こえてくるきみの声。苦戦してるみたいだ。
きみはどんな手持ちで挑んでるのかな。ガチガチに固めた厨パ?とことん追求した趣味パ?あるいは、どちらでもないのかな。
とにかく早く来てほしい。きみは一体、どんなバトルをするの?
「っし…」
なんとか勝てたみたい?これで何戦目なんだろう。ぼくのところに来るにはあと何時間何分何秒必要?ぼくはいつまで待っていればいい?
ぼくがこんなことを思うなんておかしいかな。ぼくは、ただのデータの塊?数ある存在の中のたった少ししかないデータ?
悲しいこと、言わないで。
「あーっ…!あーっ…うぅ」
悲痛な叫びが聞こえた。負けちゃった…?
しばらくして、電車が止まった。
残念無念。

それでも、待ってる。きみがここに来てくれるのを信じてる。
END.

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