――― 「ねーねー、机気になる」 「ダメだ。絶対にダメだ」 ブラボー!はさっきから私の部屋にいる。 暇だと言っていたし、今日は雨だから私に割り当てられた作業部屋に呼んでみた。 そしたら、すごく興味津々な様子で部屋の中を探索し始めた。 「この本は?」 「あ、コレは?」 「ふっかふかだ、このクッション!」 あっちこっちにちょこちょこと動いては色んなものを物珍しそうに手に取って眺めていた。 ……ちょっとだけ、ちょーっとだけ!可愛いと思ってしまった。 そして現在に至る。 「ねぇ、ちょっとくらい良いでしょ?」 「ダメだ。ダメダメだ」 私の作業机の上を、やはり興味津々に眺めるブラボー!。 私は必死で作業机を死守している。 「……どうしても?」 「どっ、どうしても、だ!」 ブラボー!の上目遣いに負けそうになるが、なんとか持ちこたえる。 なんでそんなに破壊力があるんだ、お前はそういうキャラじゃなかったはずだろう。 まぁ、それは置いといて。 「良いじゃない、ちょっとくらい!なんでダメなのよ!」 「なんでもだ!ダメなものはダメなんだ!」 「むーっ!!」 その場で地団駄を踏み始める。やめてくれ、本当にやめてくれ。 地団駄はお前の得意技だな。うん。 「サターンの意地悪!こうしてやるー!!」 「なぁっ……!!?」 ブラボー!がこちらに向かって飛び込んできたと思ったら背中に痛みが走り、同時に視線が自動的に天井に向けられる。 「へへーっ、どうだ!」 ひょっこりと目の前にブラボー!の顔が現れた。 まさかとは思うが…… もしかして、机の上に私は押し倒されていないか? 「お、おい!やめ……!!」 私はすぐさま起き上がろうとしたが、グッと押さえつけられる。 コイツ、こんなに力強かったか…!? 「ダメよ、むやみに動いたりしたら。書類がぐちゃぐちゃになっちゃうじゃない」 ニィ、と笑うブラボー!。悔しい。 するとブラボー!は、ノートや資料などを漁り始める。 そして一冊のノートを取り出すとまじまじとそれを眺めた。 「ねぇ、これ……表紙に何も書かれてないけど、何の資料?」 そのノートを見てハッとする。 「だ、ダメだ!それだけはやめてくれ!」 「えー、怪しー……どれどれ」 「あーっ!!」 パラッ、と表紙をめくるブラボー!。 私の抵抗も虚しく、次々とブラボー!はページをめくっていった…… そしてパタリとノートを閉じると、無言で私にそれを返却した。 「……サターンってさ。ストーカーの素質あるんじゃないかしら」 真っ先に言われた言葉がこれだから、私は魂が抜けそうなほどに落胆した。 あのノートには、ブラボー!の行動パターンや好きな食べ物を記録してあったのだ。 だからそのパターンを予想して待ち伏せしてみたりした。 ……なんでって。 ブラボー!が好きだからに決まっている。 だけど、逆に気持ち悪がられていたようだ。 「こんなことしなくたって良いじゃない……道理で最近よく会うと思った」 呆れた様子でブラボー!は私の上から降りる。 確実に嫌われた…… そう思った時だ。 「ま、別に迷惑だとは思ってないから良いよ。でももうこんなことしないでよね?」 どうやら許してくれるみたいだ。 「あ、あぁ。もうしない」 私は起き上がると、安堵の表情を浮かべた。 嫌われてなくて良かった。 END. 戻る |