――― 「私の仕事は、ようやく終わりというわけだな!」 ……ねぇ。 どうしてそんなに嬉しそうなのよ。 ―ハードマウンテン― ついにプルートを追い詰め、逮捕した。 だから、ハンサムの仕事は終わり。 彼はギンガ団を追ってたから、もうその必要もなくなった。 だけど。 だけど、ね。 私は少し、貴方と一緒にいすぎてしまったようで。 「さて、そろそろ行くとするか。じゃあな、ブラボー!」 彼は片手を軽く挙げると、私の前から去っていく。 このまま、お別れで良いの? 私は、それで納得できるの? 胸の奥底に仕舞い込んだ、この感情は…… 嘘? 違う。 気が付くと、私は無意識のうちに彼のコートの裾を握っていた。 「ん?どうした?」 彼は振り返ると、私を不思議そうに見る。 あぁ、神様。貴方はなんて残酷なの。 「………ないで……」 「ん?」 ハンサムは「もう一回言ってくれないか?」と聞いてくる。 どうしてですか。 どうして、引き裂こうとするの。 「行かないで……!!」 私は彼を見上げて、声を絞り出した。 私の目からは、涙が溢れては零れ落ちていく。 どうしてこんな時に涙なんか出てくるの。彼の、ハンサムの顔が、ぼやけて見えなくなっちゃうじゃない。 だけど彼が驚いたような顔をしているのは、なんとなくわかる。 「ど、どうしたんだ、急に……」 ハンサムは戸惑ったようにオロオロとしながら私を見ている。 「行ってほしくない、私を置いてどっか行っちゃわないでよ……」 上手く言葉がまとまらない。 だから、私が伝えたい一言を、言ってしまおうと思った。 「好き、なの……貴方が」 ――― ―― 「好き、なの……貴方が」 ブラボー!の、彼女の言葉を聞いた時、私の思考は一瞬だけ止まってしまった。 聞き間違いじゃないのか。 いいや、違う。 だって彼女は、こんなにも私のことを真っ直ぐ見ている。 私は彼女に触れようとした。 だが、それをグッと抑える。 今、彼女に触れてしまえば、別れづらくなってしまう。 真っ直ぐな瞳から零れ落ちるその涙を、拭ってやりたかった。 だが、そうしてしまえば、別れが辛くなってしまう。 「だから行かないでよ……ずっとずっと傍にいてよ……」 ぬくもりは背中から、やがてブラボー!の細い腕が私の身体に回される。 あぁ、神様。何故貴方様はこんなにも残酷なんだ。 「ブラボー!、こんな言葉を知っているか?」 私はそっと彼女の手に自分の手を重ねる。 「『出会いが素晴らしいほど、その別れは寂しくなる』 ……昔、遠い外国で聞いたこの言葉……今なら意味がわかるなぁ……」 私の身体に回されている彼女の腕を無理矢理外す。 そしてブラボー!と向き合うと、その小さな両肩をガシッと掴む。 その行動を、ブラボー!は驚いたように目を見開きながら見ていた。 「だから、別れるのはやめよう。だが私は行く。君は私に着いてくると良い!」 ニカッといつものように笑ってみせる。 すると、ブラボー!はその瞳からボロボロと涙を流す。それに私はまたもや驚いてしまった。 「な、なんで泣いてるんだ!?嫌だったか!?」 もしかしたら、彼女の気を悪くさせてしまったかもしれない。 だが、彼女は笑顔を見せる。 「ううん、…嬉しいの。……どこまでも着いてくから、覚悟してよね?」 それは、私が見た中で一番の笑顔だった。 「じゃあ行くぞ、何処までも遠くへ!しっかり着いて来い、ブラボー!!」 「あっ、待ってよ、ハンサム!」 彼女の手を引っ張って、私はハードマウンテンを後にする。 ブラボー!となら、何処までも遠くへ行ける。 そんな気がした。 END. 戻る |