レッドさんが先天性のおんなのこです
苦手な方はご注意を!







俺の幼なじみはほんとうに女らしくない。というのもそれは、あいつの言動を指すのであって、いつからかからだはもう女のそれになっていた。昔は男女の頓着なんてまったくなくて、いっしょに寝たり風呂に入ったりとやりたい放題だったような気もするが、思春期もむかえていろいろな意味で"せいちょう"した今となってはもう、いっそあいつの無防備さに腹が立つレベルだ。
幼なじみ――そうレッドは黒いキャミソールに同色のホットパンツをはいて、白くて細い手足をすらりとのばして俺の部屋の窓枠に座っていた。いくら細身だからといって、こいつはでるところがちゃんとでてるから余計にえろい。かろうじて身につけている服は肌の白さを際立たせるようで、なおかつからだの女らしい曲線をあらわにしている。この格好もほんとうにどうかとおもうが問題はそこじゃない。そこじゃないんだ。
邪念に捕われるまいと月刊かわいいポケモンを読みふけるふりをしている俺は、結局もんもんとそんなことばっかり考えてしまって、さっきからいちどもページをめくっていない。そりゃそうだろ、幼なじみといえどレッドは女で、俺のすきなひとだからだ。すると視界の端のレッドがそろりと動いた。そして俺のすぐちかくでかがんで、のぞきこむように俺を見る。殺人的な上目遣いだ。まんまと俺は心臓を射抜かれて、レッドと目をあわせた。

「なに読んでるの」
「かわいいポケモン、だけど」

俺が平静を装ってそうこたえれば、レッドはふうんと言って俺のとなりに腰をおろした。ふんわりとミルクのようなにおいがして、俺はくらりと目眩をおぼえる。やわらかそうな白い肌がこんなにちかくにあって、触れたいけど触れてしまったら一気になにかを失ってしまいそうでこわかった。レッドを見ないように雑誌に視線を戻そうとすれば、そっとレッドのきれいな指が俺の手にかかった。驚いてレッドを見れば、

「さっきから1ページもすすんでないけど」

と言ってふわりとわらうレッドに釘付け。おまえのせいだとも言えず、俺はうるせえ、このページがおもしろいんだよと苦し紛れのうそを紡いだ。そしてもう一度、雑誌を見ようとしたとき俺は気づいてしまった。となりに座るレッドの、キャミソールのなか。すこし長い首筋から鎖骨へどんどん視線をおろしていけば、レッドのうすい胸元とキャミソールのあいだに隙間ができて薄暗いそこが見えてしまっているのだ。俺の角度からはちょうど大事なところ、もとい先端というか、そこまでは見えないけれど、それはもうじゅうぶんな破壊力を持って俺の顔を沸騰させた。なんで下着をつけてないんだ!
ぼんっと顔を赤くした俺に気づいたのか、レッドはあやしくわらってどうしたの、と問う。どうしたもこうしたもねえだろ。俺の手のうえには未だにレッドの手がのせられていて、きゅっとちからを入れて握られてしまった。もう勘弁してくれ。とりあえずレッド、

「…あのな、……お、おま…」

おまえは下着をつけろ。
その一言がどうしても言えない俺はただただ顔を赤くしてくちをぱくぱく動かすだけで、ほんとうに声にならない。レッドは頭に?マークを浮かべて首を傾げるものだからその様子すらかわいくて俺はとりあえずしっかり息を吸って吐いた。

「…ちょっと、お茶いれてくる」

そうしてなんとか声になったのはそれだけで、俺は名残惜しくもレッドの手をやんわりとほどいて立ち上がった。座ったレッドを上から見下ろすのもさぞいい眺めなんだろうと思いながらも俺は目もくれずまっすぐドアを目指して部屋をでていったのだった。

「……へたれ」

部屋に響いたレッドのつぶやきは、もちろん聞こえなかった。











スプーンと角砂糖