がしがしと掻いた。
自分の首を、腕を、腹を、足を。

傷はどんどん増えていった。自分の爪で僕はからだじゅうを掻きむしって、傷のうえに傷をつくっていく。気づけばほんとうに、いたるところに傷があるのでそれがポケモンやバトルのせいでなく自分でつくったものだから、ほんとうにわらえない。このシロガネ山に挑戦してくるひとたちはこんな僕を見て心配そうにしてくれたり、かわいそうな目で見たりと様々だけど、そんなことはどうでもいいんだ。
グリーンは僕を見て、わざわざ塗り薬を持ってくてくれるようになった。最初に見たときはすごくおどろいて、どうしたんだそれって僕に聞いて、それはもうかなしそうに。僕は謝ることしかできなくて、こんなにえぐい傷あとをグリーンがなんの躊躇いもなくそっと触れてくれて、きみはもう、ほんとうに。僕が傷ついたことに純粋にかなしんでくれるきみをこれ以上かなしませたくはないのだけど、きみが触れたところにピリリと熱が走ったときに僕は気づいてしまったんだ。

グリーンと触れあうこと、セックスしたこと、その熱にうかされるようにきみのことを考えるとからだが疼くんだ。脳から直接きみと触れあったところに電気が走って僕はそこに爪をたてずにはいられない。そうして僕は自分を掻きむしりながら、きみのあまい声だとかうるんだ瞳とか濡れた肌に想いを馳せて、そしてひとりで欲情するんだ。どうしようもない。掻いて、想ってのくりかえし。僕がグリーンを想わないときはないから、きっとこのループは終わることがないだろう。

そんな僕を見て、きみはやっぱり心配そうに触れるものだから、そこにちいさな熱がうまれて、きみが帰ったあとに僕はまた爪をたてるんだ。この傷はきみを想ったぶんの証です、なんてそんなかっこいいものじゃない。むしろそんなことをグリーンに言ったらぶん殴られる。きみは僕が自分のからだを省みないことにいちばん怒るから、かなしむから、それから僕は前より自分をたいせつにしようと思うようになった。

きみにもっと、ずっと触れていたいよ。グリーンがずっとそばにいてくれたら僕はきっと自分を掻きむしることはなくなるだろう。でもそんなことは無理だってわかってるから、僕はきみへの低俗な劣情を指先からまた自分の体内へ、爪をたてて送りだすのだった。そうして今日も傷は増えて、きみは心配して、僕は。











救いようのないはなし