窓の外を見る。 席替えで、僕は教室のまんなからへんの、いちばん窓際になった。 桜はすっかり散ってしまって、そこから青々とした新芽をだす。 いつのまにか、あの春の肌寒さはなくなっていた。 2年生になったと言っても、去年とたいしてなにも変わらない。 クラスメイトがちょっと変わって、勉強する内容もちょっと変わって、それから。 「じゃあ教科書の23ページ、読んで」 今は英語の時間だった。 グリーン先生の英語は、わかりやすい。 みんなが言ってるし、僕もそう思う。 そういえば僕は始業式に出てなかったからあとで聞いたんだけど、グリーン先生はまだ教師になったばかりで、はじめて勤める学校がここなんだって。 正直言って、ほかの先生よりも教えるのがうまいと思う。 だから初めてだって聞いておどろいた。 そりゃあ、22歳って僕たちとあんまり歳もかわらないしなあ。 どの授業でも、僕は気づいたら寝てしまっているんだけど、グリーン先生の授業では、まだ寝たことがない。 僕は頬杖をついて、視線を教科書に向けた。 窓から初夏の風が吹きこんできもちがいい。 あまりの心地よさに、僕はふと目を閉じた、そのとき。 「レッド」 僕はぱっと目を開けた。 顔をあげれば先生がにやりとした顔でこっちを見ていた。 先生の授業でまだ寝たことがない理由。 僕が寝そうになると、あのひとはぜったいに僕をあてるんだ。 「教科書、23ページの下の行、読んで」 言われたとおりのところを読む。 べつに、寝てたわけじゃないんですけど。寝そうになってただけで。 頭のなかでそう言っておく。 というか先生、なんでいつもこうタイミングよくあてるんだろ。 英文を読み終わると先生は、よし、と言った。 それから思いだしたように声をあげる。 「あ、明日の球技大会だけど、優勝したらご褒美やるよ」 先生の言葉に教室内がざわめいた。 そう、明日は球技大会なんだ。 球技大会っていっても、全校でトーナメント制のバレーボールをするだけなんだけど。 しかもちいさい学校だから、ぜんぶで10チームくらいしかない。 それでも先生のごほうびって言葉で、うちのクラスの士気はあがったみたい。 高校生はけっこう、げんきんだ。 …そういう僕も、”ごほうび”につられてしまってるけど。 ルックアットミー というか、見すぎだよ。…どっちが、どっちを? |