シロガネ山は相変わらず銀世界。
見渡すかぎりの雪。
故郷の暖かさを懐かしむ。
マサラに暮らす母さん、オーキド博士、ナナミさん、そして。
親友の翡翠の瞳を想う。
彼のきれいな色がすきだ。
ひかりを反射してきらきらする。
まるで甘い飴玉のようで、ぺろりと舐めてしまいたくなる。



ざくざくと雪を踏む音が聴こえた。
ピカチュウが立ち上がり、そちらを警戒する。


「ピカチュウ」


いいから、と僕は相棒を宥めた。
迷いも遠慮もないような歩み。
この足音は知っている。


「よう」


もこもこのコートを着て、足にはスノーブーツ。
マフラーや耳あてなど、完璧すぎるほどの防寒をしたツンツン頭。
手にはいくつかの大きな荷物を持っている。

僕もグリーンに、やあとあいさつをした。
グリーンは差し入れだ、と言って座ったままの僕に荷物を差し出す。
いつもすみません、と悪びれもなく言うと、そう思うなら下山しろよと頭をぺしんと叩かれた。








焚火を囲んで話をする。
マサラのこと、ジムでグリーンが戦った相手、新しいポケモン。
聞いているだけでも目まぐるしい毎日だと思う。


「おまえはいつまで隠居してんだよ」


ふとグリーンがこちらを向いた。
ぱちりと目が合う。
火に照らされて、ごうごうと翡翠が燃えた。
ひかりといっしょに、吸い込まれるように。





ぺろり。





僕がグリーンの眼球を舐めるのと、彼がいてっと声を発したのは同時だった。
そりゃあ痛いか。
僕は特になにを思うわけでもなく、ただなんとなく甘かったようなそうでなかったような感覚を思い出そうとした。
もしかしたら、グリーンのめだまは飴なのかもしれない。
みどりだからきっとメロンかなにか。

僕に舐められた右目を手で抑えたグリーンは、怒った顔でずいっと顔を近づけてきた。
さすがに怒ったかと冷静な頭で考えながらも、僕は彼の翡翠から目を離すことはなかった。








ぺろり。








同時にいてっと言ったのは今度は僕だった。
思わず手で右目を抑える。
左目で思ったよりもだいぶ近くにあった翡翠を見た。



「おまえは赤だから、いちごかなにかだな」



にやりと意地の悪い笑顔を浮かべたグリーン。
考えることはどうやら同じらしい。
焚火の木の枝がぱきっと音を立てて割れた。











ジェイド








みどりの日の記念に!と思ったけど5月4日だったんですねー