『ハローベイビー』
今年も最後、もう会うことはないんだろうなとぼんやり除夜の鐘が鳴るのをテレビで見ていた夜。そのままぐっすり眠って、突然おそってきた冷気に俺は飛び起きた。6時26分、窓から入ってきたのはまさに今頭に浮かんでいた人物だった。予想外の事態に呆然とするしている俺の手をひいて、レッドはふたたび窓から出ようとする。 「ちょ、ちょっと待てっ!どこいく気だよ!」 「シロガネやま」 こんなうすっぺらいパジャマで、真冬のシロガネやまにいけってか!おまえならともかく、俺は凍死する!!そう訴えたら、俺のベッドから布団をひっぺがして、それを頭からかぶせられた。 「ぶ、な、なに」 「よし、じゃあいくよ」 よし、じゃねえよ!!おいまさかこれかぶって耐えろってか!普通に着替えさせてくれりゃよかったんだよ! ぎゃんぎゃん叫んでも、レッドは特に意に介すことなく、呆れた声で近所迷惑だよ、と言う。そして布団ごと俺を抱きかかえてたぶんリザードン?にのった。たぶん、ってのは、俺の視界が布団のせいで真っ暗だからである。 「ひ、うわ、いいいいいきなり飛ぶなっ落ちるだろお!?」 布団から顔を出そうとしたら、だめ、とおさえられた。なんでだ?怖いんだけど… 「大丈夫、僕がいるからさ」 わけがわからない、なんだこの状況。でも無意味に自信満々なレッドの言葉に、俺は頷くのだった。 布団をかぶせられたまま、シロガネやまとおぼしきところを歩いた。よかった、マジでシロガネやまに誰もいなくて。こんなところ見られたらしにたくなる。 前が見えないからしょっちゅう転びそうになって、そのたびにレッドが支えてくれる。しょうがないなあ、といった体で。誰のせいだよ、おまえのせいだよ。いつもは転ばねえよ。 いや、…でも、こんなときくらいしか素直に甘えられることって、ないんじゃないか? 「れ、レッド」 「なに」 そろそろと布団の下から手を差し出した。レッドは無言だ。うう、こっちは恥ずかしいんだ。察しろ。はやく。 30秒後くらいにレッドの手袋につつまれた手がふれて、ほっと息をつく。 「こっ、転ばないように、だからな」 「…わかってる。余計なこと言わなくっていいから」 「……おう」 そのまま、洞窟の中をふたりで歩く。ポケモンが出てきたときは、レッドが手をひいて守ってくれた。いつもなら、自分の身くらい自分で守れば?という感じなのに。う、うれしい、けど。 しばらく歩いて、一段と寒さがひどくなった。多分洞窟を出て、頂上に着いたんだろう。 「……間に合った」 レッドは立ち尽くしている。おい、はやくおまえの住処に連れてけ。寒い。 「…なにがだよ」 「ひみつ」 そう言って、また手をひっぱられる。ここまできたら、もうレッドのしたいようにさせてやろう。おとなしくついていった。 レッドが普段暮らしている洞、に入って、座らされる。そしてやっと布団が外された。 目の前では暗闇をバックにちらちら雪が舞っている。いつも猛吹雪のシロガネやまでは珍しい。 寒さにぶるりと身体を震わせたら、後から覆うように抱きつかれた。 「これで寒くないでしょ」 そんなわけない。普通に寒い。すっごく。でも楽しそうなレッドにそう言う気にはなれなくって、あったかいよ、と返す。 しばらくふたりでそうしていたら、徐々に光が差し込んできた。ここまできたら、レッドがなにをしたいのか、もうわかっていた。 「綺麗だね」 「…だな」 「たぶん、ここで初日の出見たのって、僕らがはじめてだよ」 そりゃそうだ。誰が好き好んでこんなとこ来たがるか。おまえくらいだよ。…それと、おまえから離れられない、俺くらいだ。 雪の結晶が、光に反射してきらきら光っている。たぶん、この景色は、今日じゃなくたって見れるだろう。でも、この新しい年を、ふたりきりで、ここで迎えられたってだけで、それは特別だ。それでなくとも、レッドと迎えた新年なんて何年ぶりだろう。 「やばい、ちょっとなきそう」 ぐす、と鼻がなったのは寒さのせいだったんだけど、レッドは勘違いしたらしい。抱きしめる力が強くなる。 「涙もろいのってかわいいけどさ、僕、君を泣き止ます方法も笑わす方法もわからないから、できればなおしてほしいな」 「俺が努力すんのかよ。おまえも方法探せよ」 「…わかった。じゃ、競争ね」 俺にはなおす気なんてさらさらない。なおるかどうかもわからないけど、もしなおったら、レッドが泣く俺を見て困り果てるのをもう見れなくなるからだ。せいぜい、がんばって探せばいい。その姿だって、俺にとってはいとおしい。 「今年もよろしくね」 レッドの口から直接、その言葉が聞けることが、どれほど価値のあることなのか。きっと本人はわかってない。今年もよろしく、というなんてことない言葉が、どれほど俺を安心させているかなんて、知らない。 別にわざとじゃないんだが、堪えきれなくって、やっぱり俺はないてしまった。 残念ながらレッドの顔は見えなかったが、泣き止ませようといろいろ考えているのはわかったので、バレないようにこっそり笑った。
……… さよならルミナール。のハルさんからいただきました! 年賀企画でこんなにすてきな赤緑を! こうやってふたりがしあわせに新年を迎えてくれたので、わたしもいい2011年を迎えられます 自己中心的な赤さんといっぱいいっぱいな緑がすごくかわいいです! もうほんと赤緑しあわせになれ!いやわたしがする! わたしはハルさんにしあわせにしてもらいました! ありがとうございました!!!
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