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2010.11.05 よみやさんから(文)

2010.11.05 よみやさんから(文)


僕、グリーンが好きだよ。


「…え?」

静かだった部屋にぽつりとレッドの声が落ちて、読んでいた本から顔をあげる。
そこにはいつもと何も変わらないレッドが居て。実は幻聴か何かだったんじゃないかと錯覚さえ起こす。
だって、無口なレッドはあまり感情を口にしたりはしない。
そんなレッドが突然好きだなんて。もし本当に言っていたとしたら、明日はあられでも降ってくるかもしれない。
なんて言ったらいいのかわからなくて、ただじっとレッドの顔を見つめていたらやっぱりいつもと変わらない表情でレッドは綺麗な口で言葉を紡いだ。

「僕、グリーンが好きだよ」

どうやら聞き間違いじゃなかった様だ。
一体どういう風の吹き回しだろうか。
突然の幼馴染の言葉に、おぉ、と返事をするのが精一杯だった。
他になんて言ったらいいのか。
俺だってレッドの事は嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
生まれた時からほとんど一緒に居たのに、未だこうして一緒に遊んだり出来るのはきっと俺とレッドの相性が良かったのだと思う。
無口なレッドに、どちらかといえば口数が多くて煩い――あまり認めたくはない――俺。
何がそんなにウマが合ったのかはわからないが。今までこいつと居たくないとあまり思った事がないのがその証拠だろう。喧嘩した時は別だが。

「…それだけ?」
「え?」

レッドの言葉の意味がわからない。
不満そうに少しだけ眉をひそめるレッドに、少しだけ首を傾げる。
たまにレッドの奴が何を考えているのかわからなくなる。いや、どちらかと言えば言葉が足りない。
全てを理解するには、俺はまだ未熟だ。一体レッドは俺に何を求めているのか。
ちらりと手元の雑誌に視線を向けてみても、その答えなど載っているはずもなくてすぐに視線をレッドへと戻した。

「わからない?」
「……ごめん」

まるで咎める様なレッドの言葉に、おもわず謝ってしまう。
別に悪い事はしていないはずだ。
それなのに、何故かレッドの瞳に憂いが見えた気がして俺は申し訳なさに謝った。

「……それが答えなの?」
「は?」

悲しそうにレッドが呟く。
一体レッドが何を言っているのかわからない。
けれど、レッドが何かを誤解しているという事だけは何となくわかり頭の中で状況を整理する。
わからないのか、と聞かれたからわからないと言う意味を込めて謝った。俺にとっては、それだけ。

「いや、答えっつーか…何言ってんのか理解出来ねぇんだけど」

わからない時は、素直に聞けばいい。
わからない時に無言を貫くレッド――だが、あいつは頭の回転が良いからすぐに自分で理解する――とは違い、俺はどちらかと言えばハッキリと聞くタイプだ。
あぁ、だから相性がいいのかもしれねぇな。なんて頭の片隅で考える。

「…グリーンが好きだよ」
「うん…?」

それは、さっきも聞いた。
好意の言葉というのは何度聞いても気恥ずかしい。少しだけ熱い頬を無視して、気恥ずかしさを紛らわす様に雑誌をぎゅっと握りしめる。

「…グリーンは?」

あ、という俺の声は音にならなかった。
そうか、そういう事かと俺はやっと理解した。
じっと俺を見つめてくるレッドを何故か直視出来なくて、俺は少しだけ視線を彷徨わせながら精一杯の言葉を紡いだ。

「――ありが、と」

それが、その時の俺の精一杯だった。








「そんな事もあったね」
「あれ、いつの時の話だっけ?」

まだ旅に出る前だよね、と俺のベッドに腰掛けながら言うレッドに目の前のレポートから視線を逸らさずにそうだなと小さく返事をする。
あの時とは随分変わった俺達。容姿、思考、関係何もかもがあの時とは違う。
けれども、変わってないものがある。

「なぁ、あの時からだったのか?」
「うん。気付かなかった?」
「ごめん、全然」

俺の言葉にレッドが酷い、と漏らしたがその声は言葉とは裏腹に穏やかだ。
見えないが、きっとわかりづらい笑みを浮かべているに違いない。

「ねぇ、グリーン」
「んー?」
「俺、グリーンが好きだよ」

あの時と同じ言葉。いや、正確に言えば少し違うが。
まるで俺を試す様なレッドの言葉に、俺は少しだけ口角を上げた。

「ありがとな」

だから、あの時と同じ言葉で返してやった。
きっと後ろに居るレッドも、今の俺と同じ表情をしているに違いない。悪戯を考えている様な、悪餓鬼の様な表情を。
その証拠に、小さな笑いが俺の耳に届いた。静かなこの部屋によく響いた。

「それだけ?」

どうやら、今はこの言葉だけでは満足出来ないらしい。
数年前のレッドは、この言葉に嬉しそうに笑ったのに。今では、もっと言葉を望んでいる。
月日が経つにつれて貪欲になっていくレッドに笑う。

「もう知ってるだろ?」
「でも聞きたい」

目の前のレポートを静かに閉じ適当に机の上を片付けて、レッドへと振り返る。
言葉が欲しいのは俺だって同じ。俺達は互いに貪欲だ。
だから、言ってやる。






想いをくらえ
(俺もお前が好き)






HAPPY BIRTHDAY TOKACHI!!!

………
風車のよみやさんからいただきました!!!
赤緑の成長っぷりがほんとにもえますね…
レッドさんのがグリーン意識するのはやそうだなあと思ってました
グリーンは言われてやっと意識しはじめると思ってました
まさに…これ…ッ!!!
大きくなってお互い好きって言ってるのにどこか素直じゃないのがまたいいですね…
たいへんもだえました!もぐもぐ!
ありがとうございました!!!



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