(18)




初めて犯されたときよりも早く、奴のちんこは俺に馴染んだ。二回目なのに、と思って、すぐに否定をする。あの日、何度イカされて何度突っ込まれたかなんて覚えちゃいない。途中で意識を失っていたのもあるが、事は一回じゃ済まなかった。
しばらくは、抜き身を埋めて深い溜息を漏らしていた燕寿も、俺がそこまで痛がっていないのを見て取るや、こちらの様子を伺いながらも律動を始めた。



「…うっ、ぐっ…。あ、あんっ、うくっ、」

ぎっ、ぎっ、ぎし、ぎし。等間隔の間を開けて寝台が軋む。あわせて、ぐっちゅぐっちゅと聞くに堪えない粘着音がする。出所は俺自身の下半身からだ。自分の上擦った喘ぎ声がそこに混じるともう全てを忘れてしまいたくなる。認識する力とか、思考能力なんてむしろ無いほうが倖せなんじゃないかとすら思ってしまう。
―――なんてことを、考えられることが既に厭だ。首に結わえられた飾り紐が視界の端っこで跳ねるさまをひたすら眺めながら、口を開けば嬌声しか出ない。

「あん、おっ、おく、いあっ、ごつごつ、はんっ、い、ってる…」
「お前、…締める、なっ」
「んなこと、言われてっ、もお、あ、あんっ?!」

すっかり湿った大きな手が、宥めるみたいに俺の嚢を揉み、ちんこを扱いた。

突っ込まれてすぐは衝撃で萎えていたのに、再びの弛緩を促すために遠慮無く擦られて、今や下腹に付くくらいに反り返っている。先端の穴の周りは赤く腫れ、乳白色の滴をだらしなく垂らしていた。
燕寿が下から突き上げるたび、腹の先でゆらゆらしているそこに、ぷつり、と雫が生まれる。幾度も揺らされる内に、白い玉は静かに肉の幹を伝い落ちていく。奴が手を放した後もしっかりと硬度を保って勃っているのが憎らしい。

「あっ、やっ、いやあっ、やだあ…!」

ずん、と音がしているんじゃないかというくらいに、燕寿のちんこが俺の胎内深くを犯す。
少しでも挿入の衝撃を逃がしたくて、立てた膝で何とか体を支えようとしていたのに、燕寿はあの馬鹿力でもって、無理矢理俺を下へと落とすのだ。さんざん愛撫された所為か、それとも別の原因故か、一度侵攻を赦すと最早抵抗の端緒は見出せなくなってしまった。脚を極限まで開いているにも関わらず、奴は俺の尻肉の片方を、それこそ穴を広げる勢いで掴みやがった。容赦のない抽挿を繰り返す牡は太く、実際目にするよりも体の中に入り込むとそんなん無理だ、と思うくらいに長かった。
今に内臓が喉を突き破って出るんじゃないだろうか。
よく鍛えられた腰がぐっ、ぐっと、厭らしい動きを繰り返している。抗う術もなく全身で受け止めているざまが情けなくて、余計に泣ける。後ろについた手は己の体重を支えるので精一杯で、もはや萎えてくれそうもない自分のモノだとか、浅い呼吸を繰り返す腹、赤く色づいた乳首なんていう甚だ不名誉なものをこれでもか、と燕寿に見せつけている始末だった。

「迦眩。…かくら、」
「う、あっ、あ、ああ、呼ぶなあ!」
「はっ、はは…、でも、お前は呼ぶとここが締まる…」
「ひああっ!」

相手の太股に当たって、尻たぶがぱつぱつと鳴る。それだけで十回くらい死にそうになるのに、さらに悶死しそうなことを下に横たわるクソが宣った。だけじゃない、さんざか出入りされて、多分、膨らんでしまった入り口を爪先でなぞりやがった。途端に、背骨の上をわたるように刺激が走り抜けていく。俺は涙に顔を汚しながら背を逸らす。

奴と繋がっている部分に重心が掛かるたび、熱、としか表現できないものが俺の下肢を襲った。恐ろしいことに痛みは薄くなりつつある。ただ、熱くて、ぐちゅぐちゅ煩くて―――でも、逃げ道はどこにもなくて。
喰い締める歯の間から、色でも付いていそうな甘い吐息が漏れる。聞きたくないし、聞かせたくない。目を固く閉じ、顎をぐっと引く。…駄目だ、効果がないばかりか他の感覚が鋭くなるだけだ。らしくなく荒れた奴の呼吸にまで気付いた瞬間、全身の血がぶわっと沸いた錯覚すらおぼえた。

「う、うふ、あん、ひあんっ」

後ろの蕾に塗り込められたものが、溶けてきている。汗と精とが混ざり合って、ねっとりとした感触が尻の狭間から溢れ、互いの上下動によって粘度が増していく。

(「…受け入れる為に、…自分で濡れてるみてえ」)

最悪ここに極まれりの発想だ。熱も、腐った思考も払いのけたくてふるふると首を横に振る。すると、尻を割り開いていた手が、腰から脇腹をおぞましいほどのやさしい仕草で撫でていった。まるで何かの準備をするみたいに。


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