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遅まきながら説明させていただくが、このどでかい寝台は四人寝ても大丈夫、な代物で、クソ忌々しいことに俺と燕寿は二人で共有している。
花護と花精が一室を分け合うのは通例で、そこは俺も覚悟をしていたところだ。
どうせ夏渟筆頭の倫の屋敷だ、部屋と言ってもかなり広いだろうから、壁の端にでも貼り付いて無視していれば済むかと甘く見ていた。だが、蓋を開けてみればあほみたくだだっ広い場所に、ひとつの寝台で寝起きするなんていう馬鹿げた生活が待ち受けていたってわけ。

倫家にやって来て、ほぼすぐに燕寿が遠出をしてしまったので、危機感が些か薄くなっていたのは否めない。この男と喧嘩をするにあたって、絶対に避けるべき場所は寝台だ、って、もっと早くに気付くべきだった。海よりも深く反省するぜ、もはや遅すぎるがな!

決して言うまいと緘黙を貫く俺の腰帯を、燕寿は感心するくらいの見事な手さばきでもって、引き抜いた。碩舎の上級では前時代的濡れ場のあれそれでも教えているんだろうかと思うほどの早さだった。例によって抗う暇なんてない。脇の留め玉を緩めてするっと抜く。まさにそんな感じ。

纏っていたのはくだんの、羅衣だ。よって俺の貧弱な胴体を巻いていた薄絹は床へ落ち、上半身を覆うものは首輪代わりの、飾り紐だけになってしまった。

「お…」

おいおいおいおいおい。どんな展開だこりゃ、って自問自答するだけ無駄だな。
逢ってからこちら、意味不明な発言ばっかりだった癖に、こんなときばかりまともに、奴は答えを教えてくれた。そう、燕寿にしては非常に分かり易く、簡潔に。

「…折檻の時間だな」

両端に房のついた紐を鎖骨のあたりに垂らして呆然と見返している俺の、手首をぐい、と掴み、自分自身は寝台へと寝そべる。不必要なくらいに枕が積み置かれたそこへ背中を預けて、にこやかにこうも続けた。正直に吐かないお前がわるい、と。

一纏めの手首を牽かれたまま、奴の下半身に跨る格好で座らされる。腰骨のあたりがすうすうするぞ、と思ったときには尻を半分ばかり剥き出しにされていた。一連の動作をするにあたって、燕寿はにこにこ――いや、ニヤニヤだ――顔で俺を見つめていた。
多分、倫の御曹司の、これほどにやに下がったツラを見た人間は俺くらいしか居ないだろう。そして厭らしい顔ですら壮絶に色っぽくて下品さの欠片もないってのは、世の中不公平のいい証拠だと思うね。

「なにすんだ、この変態!色魔!腐れ花護!!」

清冽さんが聞いていたら、頭を抱えるような暴言だ。
冷静に考えれば燕寿は正朱旗で、俺は緋旗の出で、不敬罪で殴られても文句は言えない。故の花護と花精なのだが、「対等」の建前を行使したというよりはむしろ、単純に頭の中がしっちゃかめっちゃかで、怒鳴り散らしてしまったという方が正解だった。

大股開きで乗りかかっている体勢も忘れて、罵る俺に、対する野郎は涼しい顔だ。

「ふざけてなんてない。真面目にやってるから、だから少し尻をあげろ」
「ハァ?!意味わからん!つか、誰が言うこと聞くか、ただちに離せ―――ッあ!」

服の隙間から手が侵入してくる。ずる、と下穿きがずらされて、肉の割れ目にそって指が線を描くように、降りる。

まだ燕寿の指は冷たくて、―――そう感じた自分に愕然とした。


思い出すべきじゃない記憶だ。


奴のたっぷりと熱を孕んだ舌肉は、今、指の先が押し付けられているよりもさらにその下をまさぐったのだ。さらにおそろしい、焼けた杭かと思うほどのモノが、欲の尽きるのを知らぬかのように、同じ場所を突いた。何度も、何度も。



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