(5)
「――…」
周霖の動きがぴたり、と止まった。
大人しくなってくれるなんて期待しちゃいなかったので、驚いた。驚いたが、これ幸いにと続ける。
「…なあ、奉城から来た報告に目を通してくれよ。俺じゃ判断できない。お前が見てくれないと」
熱くなった下肢を擦りつけ、衣を乱されたあられもない格好だったが、所詮、花精の性欲は人間に付き合うだけのものだ。あっという間に鎮火できる。
「頼むから。…周霖」
襟を引き寄せて、繰り返し懇願すると、彼はさいごの一個をぽいと口へ放り込んだ。止める間もない。半日を費やして手に入れたのだろう品物が瞬時に消えていった。恬子には済まないことだけれど、後でなにか詫びをいれようと思う。今は御史の務めこそ大事だ。
周霖曰くの、俺の「余所事」はそこまでで終わりだった。
「あっ、」
痛み――よりも、驚愕が勝った。
背中から抱え込まれて、無防備な喉へと突き立てられる鋭い牙。俺は目を見開く。一面に広がるのは、あの金の髪だった。
「…ぐ、あ、あああっ?!」
「ふ、…はッ、…やはりお前は何遍言ってもきかねえなァ。きかねえ奴には…こうやって…打擲してやるしかねえよなあ?」
細い首輪が、彼の歯にぶつかってかちかちと鳴っている。痙攣する脚の先にはめられた足輪の、鈴も。
肉食獣が獲物にするように喉笛に食いつかれ、俺は本能の発する恐怖と、―――体躯に叩き込まれた快感でぶる、と震えた。
「あ、い、痛い、周霖、…は、離し…」
開いた口から止め処なく涎が垂れる。それを、指が丹念に拭いはじめたときには、次に何をされるかは想像が出来ていた。下穿きをまさぐり、無理矢理浮かせた俺の尻へと指が潜っていく。前は既に張り詰めていた。後孔も、何度となく咥え込んだ指を待ちわびたように、緩やかに綻んでいく。
花精のからだは人間に都合よく出来ている―――特に、つがいの花護に。
「盛るか、食べるかどっちかにしろって言ったのは、てめえだ、伎良」
最後通牒のように周霖は言った。
あの、子どもっぽい顔に隠す気のない情欲が滲んだ、名状しがたい表情をしている。この顔も好きだと、ぼんやり思う。
下穿きはずらされ、膝のあたりで衣がたぐまった。彼に自ら抱きつく格好で、そうされるのを助けたのは他ならぬ俺だ。
まだ硬さを残すそこに、つがいの怒張が触れるのを、それこそ、唾を呑み込むような心持ちで待ち詫びる。首や、胸を悪戯に甘噛みしながら、腰を支えている手がゆっくりと俺の身体をおろしていった。目を閉じて、一瞬を待つ。
他に考えることなんて、―――きれいさっぱり消失していた。
>>>END
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