4.白柳と比扇




「十和田の頭の悪さは前から分かってたけどさ、まぁ、考えることが浅はかだよねえ?そうは思わない、てっちゃん」
「今更じゃねえの。三つ子の魂百までって言うだろ」
「馬鹿は死んでも直らないとも言うよね」
「そうそう。…って、あいつまた何かやったのか?」
「…うーん…」
「おい、ハコ」
「俺はアレかなあ…」
「聞けって」
「あ、ごめん。ちょっと考え事」
「はぁ?」
「いや、あのさあ、自分にとっての人生最大の恥って何かなって思って」
「…はあ。…またなんだよ、いきなり」
「うん、ちょっとね。…直ぐに思いつくことって、案外違う気がするし。できれば忘れたいって思うのが人情だよなあ」
「まあ、―――そうさなあ。性格にもよると思うけど、オレは速攻で忘却するね。だって覚えてないなら、無いも同然だろ。恥ってある意味弱点なんだから。ウィークポイントなんて無いにこしたことねえじゃん」
「…ふうん」

(「…なんか、微妙な反応だな…」)

「…で、何なんだよ」
「うん?」
「ハコの『恥ずかしい事』。思いついた?」
「え?…ああ。読書感想文で賞取ったの。中学生のとき」
「別にいいじゃん」
「よくねえよ。『十五少年漂流記』だぜ?俺は『蠅の王』で書くつもりだったのに、教師が課題図書じゃないから駄目だとかほざいてさぁ…。適当にけちつけられないように書いたら選ばれてさあ。ねえし」
「そんなもんかよ」
「そんなもんだよ。自分にとっての恥ってやつ?使い古しの言い方ならアイディンティティーとかいう感じ?…兎にも角にも、あれから人生無理はしないって決めたね俺は」
「早ええよ十代」

「で、てっちゃんは、どうよ」
「あー、オレ?…うーん、思いつかねえな…。言ったじゃん。忘れたいタイプなんだって」
「え、あるじゃん分かり易いのが」
「―――は?」



「遠距離恋愛の彼女が、実は彼『女』じゃございません、とかさ」

「……………」


「十和田が知りたいのは、つまりはそういうことなんだよね。ああ、安心してよ、あいつの狙いはお前じゃないから」

「…はこ、やなぎ。…お前、」

「うん?なあに、―――てっちゃん」



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