2.安納と卯堂と橿原



「かっしー、聞いた?」
「ん?なんだよ、安納」
「十和田がさあ、皆の恥ずかしい話、聞き回ってんだってさ」
「…はあ。あいつもまた物好きな。で、お前、答えてやったのか?」
「や、俺まだ。かっしーん所、先来たかなあって思って。まだか」
「大体、聞かれたところで素直に答えないよなあ、普通。な、うー」
「……」
「うー?」
「ユウヤ?」

「…っぜえ、」
(「あ、やば」)
(「…まずいなこれは。…久馬は…、いない。白柳もか…やれやれ」)

「アイツ、超うぜえ!!何?一体何様?!どこの何方様なワケ?放っておけよって話!大人しく答える義理なんて皆無なんですけど!つか、言う前のてめえの口を塞ぐわ!そんな質問を俺にしたことを一生後悔させてやる!!アイヘイトユー!」

「あーあ…出ちゃったよ四中の特攻隊長」
「愚煉(ぐれん)の狼だっけ。すごいネーミングセンスだよな」
「かっしー、その仇名内緒。ユウヤ、それ聞くともう収拾つかなくなるくらい怒る」
「了解。…最近、うーの十和田嫌い、沸点下がってるよな」
「あーあ、中指まで立てちゃって…そのうちファックユーとか言い始めたら、俺どうしよう」
「あんなチンカス野郎ファックなんてするかよ、ボケ安!てめえをファックすんぞ!」
「…ぼ、ぼけって、ボケって言われた…!!」
「…うんうん、落ち着け。多分本心じゃないから。ノリだから、安納。
あとさ、ショックを受けるんならそっちじゃなくて、てめえ以下の発言にしてくれないか」
「うっ、うううう…」
「うっぜ。超うっぜえ。洟垂らしながら泣くんじゃねえよ」
「おい、うーも冷静になれ。当たるんなら十和田本人にしろ。ほら、安納が恐怖のあまり呼吸困難になってる」
「…あの公害をボコりたいのはやまやまだけどさァ?ばれたらまず久馬がキレるし。問題起こしたら大会出れんくなったりすっしさあ」
「た、大会って、宥哉(ゆうや)、しょ、障害物だっけ」
「障害物じゃねえの。障、害、走。トッパっつうの。障害物ったら麻袋で跳ねたり、粉に顔突っ込んでアメ取ったりするやつになっから。覚えとけ、な?」
「お、おう」
「障害物走って言ったら、一年のときの体育祭、安納出てたよな」
「うわ、やめろよその話…」
「あんだよ。言えよ。気になっじゃん」
「う…」
「ミツルくーん?」
「そ、その。去年の体育祭で、障害物走出てさ。平均台の下くぐるときに目測誤ってケツ、打っちゃってさ…。しかも超勢いよく」
「ブッハ!マジ?!」
「マジマジ、大マジ…。あまりの痛さに悶絶してビリだったんだよ…。しかも尻に痣できちまって座れねえし、保険医は湿布貼るからケツ出せとか言うし、とどめに痔持ち疑惑とか発生しちまって散々。そんときの彼女がくれた誕生日プレゼント、ひっでえの」
「輪っかの形した座布団、だったよな」
「もー、なんでそういうこと覚えてっかなあ、かっしーは!!」
「ギャッハ、アハハ、何だそれすっげパネェし!ケツ打ってドンケツってか?」
「……」
「……うー、そのセンス十和田レベル…。安納も泣くな。男だろ」
「ッハ、あの歩く公害と俺を一緒にすんなってんだよ。カシハラよぉ、てめえ、今度の冬季、見目いねえからって、気抜くんじゃねーぞ」
「……」
「か、かっしー?どうしたんだよ。いきなり黙って」
「アッハハ、これカシハラの恥部な、恥部」
「…そういうことを、でかい声で言うなと…」
「見目って、確か生徒会長だよな」
「そお。あいつ生徒会入ったから剣道部辞めたんけど、県大の個人戦、去年で既に優勝してたからさ、カシハラ勝ち逃げされてんの。しかも部内戦でも全敗してんしょ?頑張れよォ?」
「うるさい」
「おー!優等生が怒った−!」

(「…久馬、早く戻ってきてくれ…!こ、この際ハコでも我慢します、神様!」)


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