1.久馬と糸居




「ねえねえ久馬」
「あんだよ」
「久馬の人生最大の恥ずかしい出来事、って何」
「…せめて起きているときくらいまともなこと言ってくれ。つか、何でそんな話になんだよ」
「ひーに聞いたんだけどね、十和田が皆の恥ずかしい話聞きたがってるんだって」
「己の存在自体が人類にとって恥だって事実で満足できんのか、あいつは」
「多分、いつかわかるよ」
「……」
「それが本当に正しいことなら、必ず、これからの人生で何かの機会で、ただされる日が来る」
「お前さり気に酷いこと言ってるぞ」
「そうかなあ」
「そうだよお。で、何故にオレが言わねばならん」
「え、なんか単純に聞きたくなったの。俺が」
「はあ。…それ、言ったら得すんの?」
「うーん、ないかも。」
「あー…」
「……」
「しかし、糸居の正直さに免じて教えてやろう。引き換えにお前も言え」
「なんで」
「オレも単純に知りたくなったから」
「おお」
「どうだ、オレに興味を持って貰えて嬉しいか」
「うん、嬉しい嬉しい!」
「おしゃ、じゃあな、いっせいのせ、で言うぞ」
「ほーい!」
「いっせいの、」
「せ」


「大体育館の正面玄関に飾ってある賞状と盾の隣にある、去年の国体ゴールイン写真、ユニフォームのパンツが前後裏表完全に逆で、ケツんとこにシモの穴が開いてて、タグが丸見え。あれが卒業後も陳列されるのかと思うと今から死にそう。一番恐ろしいのは未だに誰も気付いてねえってこと」
「世界史の授業のとき、寝ぼけて剣菱におかあさんて言った。しかも普通に『はい』って返事してもらった」


「……」
「……」
「コラァ」
「あ、痛っ」

「…うぉい、糸居。てめえ、なんでそんな小市民的なんだよ!人の期待を裏切りやがって」
「え、だってすっげえ恥ずかしいし、って言うかさ、久馬の長すぎる上に早すぎて俺きこえんかった。もっかい言って」
「いやだね」
「えええー!」
「因みにお前のはばっちり聞いたから」
「嘘ぉ。超めんどうしい、やめてええ」




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