皆川有輝の場合(1)
【皆川】
好きとか嫌いとか、付き合うとか恋人とか、普通に面倒だ。友達なら友達でいいじゃねえの。
まして今回の菓子を寄越してきた連中は名前も顔も知らない他人だ。一目惚れとか言われても困るし。
一目惚れのメカニズムは完全に解析されていないけれど、種の保存に従ったDNAの為せる技、とか、自己愛の延長なんて説がある。普段見慣れた顔、イコール自分と似た雰囲気の奴を選ぶパターンがそれだとか。
じゃあ、俺の場合はどう考えればいい?
同性で子孫繁栄はないだろ。自分と似た奴なんて俺だったら絶対御免だ。そんな相手と付き合って何がしたい?ヤられたり…まさかとは思うが、ヤったりしたいってことか?…俺と?
ねーだろ、それ。他人の性的趣向に口を出す気は毛頭無いが、巻き込まれるなら話は別だ。
高濃度の感情を押し付けられているみたいで吐き気がする。
身動きが取れなくて、フットワークが重くなる。自分が自分じゃなくなる。凄い面倒臭い。
俺には他にやりたいことが――やらなければいけないことがあるんだよ。
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