(10)



「っ、はぁ…、…く、」

胸の飾りを引っ掻いてやる度、とよとよは甘く呻いた。それに気を良くして、爪を立てていたソコを、ぐにぐにと押しながら首の筋を舐める。
いじくっていた右の乳首だけがぐみの実みたいに硬くしこった。女の子と違う、膨らんでも柔らかくもない、つるっつるぺたぺたの胸なのに、俺は思わずそこへと食いついた。

「…っあ!」

舐めたり、軽く噛んだりする度にとよとよの反応があるのがやばい。俺のすることでちょっとでも気持ちよくなっていたらいいのに。

「とよとよ、気持ちい?」

後輩は弱々しく首を横に振った。快感を堪えているようにも、否定をしているようにも見える。分からない。
右の刺激を続けながらも、俺は左の乳首を指で捏ねた。とよとよの肌の上で、そこだけが淡くを主張を始めている。

「あ、今、内股ぴくんてした」

環が嬉しそうに声を上げた。
相方は、さっきから誘うように浮き上がっていた腰の骨を撫で、そこから先、太股へと掌を侵入させていた。いつもはバトンを振り回している指がスウェットの布地の下でゆるゆると蠢いている。なんつうか、えろい眺め。

「周、キスいつすんの」
「っあー」

そうだよ、まだキスもまともにしてねえよ。

「でも俺、もうちょいとよとよがマトモな時にしたいかも」と環は呟いた。
「だよなあ…」

抵抗の薄いとよとよだって、普通に好きだ。たくさん触らせてくれるし、どうした!?ってくらい色気があるし。
でも出来ればちゃんと、とよとよから「好きだ」って言って欲しい。そんでもって彼からキスをして貰いたい。
俺の壮大なドリームを説明すると、環は感じ入った風に頷いた。分かるよな、このロマン。

「じゃあまずはとよとよに気持ちよくなって貰って」
「俺らのこと、しっかり欲しがって貰わんとね」

尖りきった胸の先っちょを最後に一舐めすると、とよとよが小さく悲鳴を上げた。
それを落ち着かせようと、俺の頭に寄りかかってきた後輩の頭をくしゃ、と撫でる。とよとよの視線が一瞬、こちらに流れた。
溢れた蜂蜜みたいな、目。

「…とよとよ、…しんどいの?」

彼は答えない。
は、は、と忙しなく吐息を零している。それだけでも充分煽られる。
ゼータク言うなら、こっちをずっと見てくれたら余計に燃えるのに。
とよとよはしっかりと目を閉じて、俺の手から離れた。次に蜜色の双眸が見たのは古びた天井だった。

「とよとよ、ね、次どこ触って欲しい?」

環が首を伸び上げて聞く。

「……ど…こでも、」と、か細い声が答えた。
「どこでも、…すき、に…」
「環」
「ん、もー一気にやっちゃう」

腰ゴムを引っ張って、「とよとよはボクサーかあ」とか嬉しそうに言いながら、相方はずるりとスウェットを引き下ろす。静脈が透ける、ほっそりした両脚はそれなりに筋肉がついている。どこもかしこも、食べたら美味しそうな感じ。大家の気持ち、すんごいよく分かるなあ。

股座にはまだ反応なし。やっぱり直接いじんないと駄目だよな、なんて思っていたら、環がボクサーパンツのはしっこに手をかけていた。俺が奴の名前を呼ぶと、環はむっと頬を膨らませた。

「我慢できないよ、周。早くとよとよに触りたい」

だろうと思った。だって俺も同じだから。

「だってこれ、据え膳でしょ」と片割れ。「据え膳喰わぬは武士と楊枝の恥って言うじゃん」


「…それを言うなら、武士は食わねど高楊枝、据え膳喰わぬは男の恥だ」






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