飽和X



(久馬)


あかん。こんなん癖になったら不健全以外の何物でもねえぞ。短期間ながら存在した彼女にだってやったことない。さらに恐ろしいことには、そういった女と致した「本番」よりも、気持ちいい。断じて性的嗜好なんぞではないと、信じたい。
うん、あれだ、リリカルな表現をすれば気に入った奴相手だと感じ方が違うとか何とか。

月下の痩せた尻を丸出しにして、両側をしっかり固定して自分のちんこを股の間に突っ込む。所謂、なんていう回りくどい前置きは無しにする。素股だ。肌理の細かい太股はめちゃめちゃ具合がよくて、オレの先走りや月下自身の尻穴を濡らしていた謎粘液によって、淫猥な―――まるで性器そのもののような粘着音を上げた。

「あっ、あっ、あ、あ、」

腰を繰り出す度、掠れた彼の声が途切れ途切れに零れる。試しに窮屈そうな陰嚢を目掛けて突き上げを強くすると、快感たっぷりのその悲鳴は大きくなった。自分の為したことで相手の反応が変わって、で、気分良いってお前何歳だよの世界だよな。我ながら痛い。

けれど、目下のオレの、頭を占めている事象はそれだけだった。
オレが触ると月下が反応する。甘えたような、救いを求めるような、…でもどうしたって勃つ要素のない筈の男の声で嬌声をあげる。自ら太股を締め付けて、オレのちんこがごりごりと出入りするのを助ける。月下自身のモノは、弄り倒されて先をすっかり赤くしていた。服が擦れても痛いレベルかもしれん。なのに、オレが自分のごと彼のをしこってやると、腰をがくがくと震わせながら啼くのだ。もっと、と言うように。

黒髪の下の瞳はやがて閉じられて、涙の玉を浮かべ行為に完全に没頭していった。口脣の血色は紅を刷いたみたいに鮮やかに、変わっている。喰い締められた歯。オレに与えられる抽挿を甘受するしかない無防備な体躯だ。
ぽっかり空いた穴を思わせるゴールは、近くにある。二人して転がり落ちていく。

実に愚かしいことだが、あの瞬間は、それだけが、すべてだった。

「あ、はあっ、い、いい、…あんっ」
「く…、さかした、…月下っ、」

名前を呼ぶとさらにいいって、どんだけだ。彼の背中の窪みに額を押し付け、細い身体を思うさま揺らした。素股でこんなに感じられるんだ、あの茜色の教室の通りにしたら一体全体どうなることやら。
自嘲しながら、淫らに誘う夢の彼へしてやったことを、した。カリの根元に爪を立てて、そこから尿道をくじってやる。

「ひぃっ!…あぅっ!」

AVと妄想がない交ぜになった彼はいやらしく喘いでいたものだが、現実の、色気のない声の方が遙かに腰にきた。リアルすげえな。

「だ、だめだ、だめ、…あっ、あ、あ」

竿を掌で揉み込み、さらに追い立てる。肩がしなった。きゅん、と窄まった後孔を擬似的に犯すような勢いで、肉の割れたところから、嚢、幹が続いていく部分をぬこぬこと擦ってやる。なんか煩いと思ったら俺の呼吸だ。ぜっ、ぜっ、と獣みたいな音が気管からひっきりなしだ。ざらついた、欲情しまくった声で、月下の耳元に囁きかけた。

なあ、今、お前にこういうことしてんのはオレなんだ。褒められたことじゃない、むしろお前にしてみれば災難の上塗りってところだろうよ。お前を助けるふりして、結局は自分の欲望を満たしてるだけなんだ。と言う訳で、後で糾弾できるように、ちゃんと覚えとけよ。そのときはオレも床に頭擦りつけて謝ってやる。

だから、

「…いけよ」

もうほんとう、楽になれ。

涎を垂らす彼の陰茎から手を放し、上半身を腕で抱き締めた。薄い尻の肉と、オレの太股がぶつかってぱんっ、と鳴った。腰を引いた刹那、耐えに耐えていたものが、濁った音を上げながら噴出する。


「―――ッ!」


全身を痙攣させながら月下は絶句し、オレは彼の股の間に白い粘液を吐きかけた。断続的に射精は続く。ぶぴゅる、と聞くに堪えない音がする、が、こればかりは一度出たら自分の意思じゃあどうともならない。力を失った脚の間にちんこを擦りつけながら、昏い悦びに浸った。後々、己の非道ぶりにもんどり打って悶えるイベントが待ち構えていることなど、そのときのオレは知らずじまいである。


彼は―――月下は、回した腕へ引っかかるようにして失神していた。





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