融解Z




熱い、でも、厭な感じじゃなかった。捻挫に似た、重く締め付けられる痛みとは違う。血流に乗って、全身に熱が伝播していく。変なスイッチが入ってるみてえ。
あー、頭ん中、焼き切れそう。月下はいやだとか言ってる癖に、快感に負けて脚全開に開いているし。掴まえていた手首をそうっと離してやっても、もう抵抗されることはなかった。

「ひうっ、あ、はあんっ…う、くうっ」

舌肉を口の奥へ落として、喘ぐだけ。さて手は何処へ行くのやら、と思いつつ見ていると、よれたシャツを襟から力一杯引っ張り上げて、顔を隠されてしまった。
だけど、俺が扱きまくってるちんこは勿論丸見えだし、袋から下も薄紅の液体でねっとり汚れている。逆にえろさは増すばかりだ。
膨らんだ、小ぶりの嚢をやわやわと揉む。根元を軽く握り込んでやると、さらに数段高く彼は啼いた。吐息が、俺のシャツを湿らせた。

本当は、すっげえ気持ちいいんだろう。気持ちいい、ってもっとあんあん喘いじゃった方が楽なんだろうに。

(「…あ、」)

ぴる、と掌を濡らす感触を受けつつ、遅まきながら気付いた。
俺も顔面にぶっかけられた、あのピンクの液体。こうして改めて見下ろすと、月下の身体のそこかしこにくっついている。でもって、口の周りと、ケツの穴の付近が一番多い。自発で濡れたみたいに見えるくらい、って相当な量だぜ。
単なるローションかと思ってたけどよ、おかしくね?ちょっとやばい類のやつなんじゃねえの。幾らなんでもこれ、イき過ぎだし。月下はいやだいやだ連呼してるし。

「なあ、月下」
「ふあっ、ああ、あっ、きゅうま、や、やめっ、て…!」
「……」

瞬きをするたび、シャツの身頃から覗く黒い目は、涙と艶を含んでいく。喉が渇くのか、しきりに口脣を舐めていた。この状態で名前呼ばれるのって、下っ腹に相当くる。俺は堪らず唸り声をあげた。ついうっかり、がうっかりじゃ済まされないレベルを踏破しちまいうである。…いや、もしかして、既にやらかしてんのか、俺。

「…お前さ、なんか白柳に飲まされたりとか、しなかった?」

ペニスを擦る手を止めてやって、彼へぐっと屈み込む。ツラを隠す腕をふたたび捕らえて、今度は退かせた。なるべくやさしい動作を心掛けたつもりだが、どうだか。
さらに上半身を寄せると、歯を食いしばりながら月下は、俺の膝に額をくっつけた。クロワッサンみたいに身体を屈折させている。尻の間から、とろり、と卑猥な色の液が伝い落ちていく。

「の、飲む…?あの、み、水、とかっ…」
「水?フツーの?」
「はっ、白柳も、飲んでた…」

変態に変わりはないが、十和田みたく365日24時間、寸暇を惜しんで盛っているわけじゃなし、ハコのあの暴走ぶりは薬の所為とも思えない。残念なことにあれは素。素である。
ならば水は、ただの水だ。そういや引っ繰り返した机の上の品々に、空のペットボトルがあったような気もする。見覚えのある銘柄だったな。

「他は。このピンクのでろでろ、なんだよ。お前体中塗ったくられてっぞ」
「ふ、ううっ」

胸にも、腹にも、と付着した粘液を指で辿ってみせると、白い腹はそのたびにびくびくと震えた。依り合わさった理性の紐のひとつが、また、音を立てて切れる。
されるがままに上気した顔を晒して、けれど彼は舌を縺れさせながらも返事をしてくれた。

「さ、さいいん、ざい」
「…さいいんざい?」
「くちのなか、とか、…そこ、とか、おしりの、穴…、あ、はあっ」

いっぱい、いっぱいかけられたんだ、と舌っ足らずに言われて、ごくりと唾を飲む。
さいいんざい。変換候補はひとつしかねえだろ―――催淫剤だ。
どこの世界のまともな高校生がそんなもん手に入れるんだよ?!おいコラ、ハコのクソったれ!
脳裏の友人は、超良い笑顔で「ネット通販って便利だよね!」などとほざいていた。実際にもそう返されそうで、心底うんざりする。




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