融解Y



(久馬)


頭、ぐらぐらする。煮えてる。
真っ赤な舌を収めた口脣が、見せつけるように―――誘うようにに開いていった。
しかも、俺に対して這い蹲る、背徳的な格好でだ。後者は単純に、彼に自重を支えきる馬力が無かったのが理由だってのは分かる。だけど、なんで口を開くわけ。放っておいたら、脚でも舐めそうな勢いだった。まさか、いや、そんな。

彼も大概だったと思うが、俺は俺で、心身ともに瞬間湯沸かし器状態になっちまって、本能が命じるままに相手を押し倒していた。ハコが見たら指差して大笑いしそうな醜態だ。違うな、「今の」「あいつ」なら、にこりともせずに引き剥がしに掛かるくらいのこと、するかもしれん。こと月下に関しての執着は、厭な程見せて貰った。

「ん、は、」

深く口づけ、ベロの先をそっと噛んでから、ちゅ、ちゅ、と細かくキスを繰り返すと、平たい体躯が揺れた。乱れた短髪が冷たい床に散る。頭とか背中とか、痛いだろうなと思いつつもやめられない。

「んう、ううーっ!」
「この、暴れん、なっ…!」

あれだけ痛めつけられていたにも関わらず、彼は残存兵力を掻き集めるかのごとく必死に抵抗してくる。
あまりにじたばたするので、片手で細い両手首を床へと押し付け、もう片方の手で月下の牡を握り込んだ。俺にも同じものがついている、第一他人のそれを素手で掴むなんて、初めてだ。頼まれたって絶対やらねえし。しかし、月下のものとなると、嫌悪感がないってのはどういうことだ、俺。

好きな相手がすることであれば、何でもオールオッケー、というほど心が広い人間じゃない。そんなん自覚済み。つまり、これは俺にとっても障りのない展開ってことなのだ。厳禁なもんだ、と、熱に浮かされた頭において、幾ばくか残っているまともな部分がそう、自嘲する。
残りの大部分は、夢の再現かと見紛う眺めに釘付けだ。よれた白いシャツ、それとは違う白さの、なまめいた膚。誰かさんに玩具にされたのか、乳首はふっくら勃ち上がっている。視線をずらしていけば、しとどに蜜を零す性器があって、俺の掌で快感に震えている。先端はつるりとして赤く、きれいに筋の通ったスリットが浮いている。そこからぷくぷくと漏れているのは、彼が感じている証だ。
力なく拓かれた脚は、時折、電気を通したみたいに跳ねた。ほんのり朱に染まった内股に、ピンクだったり乳白色だったりの、卑猥な痕がべったり付着していた。ぴゅるり、と指の間をすり抜けて滴が飛び、痕跡があらたに加わる。

「…っ、はっ…、は…」

彼だけじゃなく、俺の吐息も相当に荒い。荒い、てか、これ、もしかしなくてもケダモノってやつか?
試み、正直に白状すれば好奇心で、ゆるく、手を上下させてみる。同じタイミングでわななく口脣に舌を這わせながら離れると、情欲も露わな声がそこから溢れた。ちらと視線を遣ると、慎ましやかな陰毛はひくつく下腹に纏わり付き、無体を働く俺の手は、海綿を握り込んでいるみたいに、ちんこごと、びっしょり濡れている。

「すげ…」

出しまくった所為か、精液はかなり薄く、水っぽい。なのに、牡は相変わらず屹立している。痛々しいくらいなのに、全身を淡いピンクに染めた彼の姿があまりにえろくて、俺は憑かれたようにぐしょぐしょのそこを擦り続けた。

「ふあっ、やっ、やめろ、ひゃ、いやあっ」

普段の月下のそれより、数段高い声。嬌声。白柳に嬲られていたときのような悲壮感は薄い。緊張の糸が切れただけか、完全に飛んじまったのか。
どちらにしても、安心させておいて、油断したところを襲ったみたいでばつが悪い。みたい、じゃねえし。まんまだよ。



(左の足首が熱を持ち始めている。)



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