痕
【斗与】
中学3年の3月に彼女が出来た。高校1年の春に、別れた。
『彼女が出来たんだけど、別れた』
電話越しの兄貴は『ああ、』と妙に納得した色合いの声を出し、少し笑った。
良かったな、ともそれは残念だ、とも言えないじゃないか、と。ややあってから、
『両方言えば良かったんだな』
と愚にも付かないことを言う。
『その歳の恋愛なんてそんなもんだ、3ヶ月でも長いっていうぜ。高校でいい彼女が見つかるよ、斗与』
今度こそ間違いのない慰めに、俺は生返事を返した。ほんとうのことは言えなかった。
好きだったんだ。でも駄目だったんだ。
初めてじゃなかった、似たようなことがあった。また、うまくいかなかった。
俺は多分、ひととして何処か壊れているのかもしれない。
[*前] | [次#]
[目次]
[栞]
恋愛不感症・章一覧
main