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それは弱さか強さか(永琳)


ずきん、ずきん、と傷が脈打っている。
深い眠りから覚めて、ぼやける視界をハッキリさせたくて目を擦ろうと腕を持ち上げようとすると鋭い痛みが全身に突き抜けた。

「いっ……」
「夜月さん、今は瞬き以外の動きを取らないように」

少し、苛立ちを孕んだ声が横から聞こえてきた。
そちらを見ようとするが、首を動かそうとすると鈍い痛みが走る。おいおい、これ重傷どころの話しじゃないぞ。
本当に瞬きの動きしか取れない中、横の人物は、はあと溜め息を吐いた。

「貴方も幻想郷に住む者なのであれば、護衛術のひとつくらい身に着けないと、いつか死ぬわよ」

そこでやっと意識が全て戻る。
鼻をつんざくような薬の匂いと、その落ち着いた声で、隣の人物は、永琳さんだと分かった。

「あ……う、えっと、その……」
「覚えてない? 貴方、妖怪に襲われたんですよ」
「ああ……」

おれは曖昧にしか憶えていない記憶を繋ぎ合わせる。
人里にでも行こうかと魔法の森を抜けて、ゆっくり飛んでいたところに、大きな衝撃が走った。それで、箒から落ちて……そこからは憶えていない。

「もっと警戒心を持ってください。貴方が死んだら泣く方が大勢いますよ」
「すみません……以後気を付けます」
「貴方がいくら優しくても、妖怪は容赦なく貴方を襲ってくるんですからね」
「でもおれ、チキンなんで弾幕ごっことか出来る気がしなくて」
「そうではなく」

ぺちん、と優しく頬を叩かれた。

「貴方の場合、どうやって妖怪を退治するかではなく、どう妖怪に襲われないようにするか、なんですから」

頬に当てられた手が輪郭をなぞっていった。


「どの生き物も傷つけたくないと言う貴方の気持ちは賢明かもしれません……ですが貴方は、もっと良心を捨てるべきです」
「いだっ」

またこんな重傷で運ばれてきたら怒りますよ、と永琳さんはおれの耳を思いっきり引っ張った。




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