この作品には性的描写が含まれています。
18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
NC-17 for explicit SM sex and spanking.





「最近、忙しいの?」
 なまえの言葉に白蘭は目を見開くと、次の瞬間にはがっくり項垂れて、首を横に振る。
「なまえチャンの前では常に余裕のある男で居たかったのに。忙しくしてるように見えたなんて……ショックだなぁ」
「余裕あるっていうか毎日ダラダラしてるようにしか見えない白蘭のことじゃないよっ」
 まるでこの世の終わりと言わんばかりに大袈裟に落胆を示す白蘭になまえは勢いよく抱きついた。その衝撃で白く大きな手の平から小さな白い菓子が零れる。二人が仲良く腰掛けるソファーの上を通り、床に落ちるマシュマロ。それの転がる先を名残惜しそうに目で追い続ける男に、唇を尖らせながらなまえは続けた。
「オレが言ってるのは、レオ君のこと! 最近全然顔を見ないから、白蘭がいっぱい仕事押し付けてるんじゃないかって思って」
「あれ、言ってなかったっけ? レオ君、辞めちゃったんだよ」
 事も無げに発せられた言葉に、元々大きななまえの瞳が更に大きくなる。
「な、なんで!?」
 男が身を包む真っ白な服に掴みかかり、詰め寄った。胸ぐらを掴む、という表現が似合うそれをしかし振り払う素振りもなく、笑みを浮かべたままの唇は答える。
「“一身上の都合”だってさ」
「…………イッシンジョーって、何?」
「個人的な理由ってこと。よくあるのは病気療養とか、今の職場に不満があるとか、もっと良い会社に引き抜かれたからとかだね」
 ふうん、と興味のなさそうな声を装っているが、寄せられた眉や、頬に影を落とす伏せられた睫毛を見れば、いなくなった部下をひどく惜しんでいることは明白だった。
「……ところで、いつまで掴んでるつもりなのかな」
「あっ」
 なまえは慌てて手を離した。無意識とはいえ、自分の立場でしていいことではない。謝ろうと口を開くが、次の瞬間、唇は別の言葉を紡いでいた。
「白蘭……怒ってる?」
「そう見える?」
 首を傾げる男の顔には、いつもと同じく笑みが浮かんでいる。十人に聞けば十人ともが『怒っているようには見えない』と答えるだろう、満面の笑み。だがなまえは、見える、と小さな声でしかしはっきりと頷いてみせた。
「へえ?」
 真っ白な髪を揺らしながら、笑う。何かを奮い起たせるかのようにギュッと握られているなまえの拳に気がついたからだ。手を伸ばし、拳に触れてやれば、小さな体が大きく揺れた。白蘭は、大丈夫だよ、と言うようにニッコリと笑い――
「なら、脱ぎなよ」
 そう言い放った。
 なまえは初め、冗談だと思った。けれど、笑っていない眼と視線がぶつかり、頬を引き攣らせる。一気に鼓動が早くなり、同時にじわりと瞳に涙が滲むのがわかった。
「下だけでいいよ。お仕置きするだけだから」
 ニッコリと微笑まれ、小さく頷くことしか出来ない。前髪の奥から覗く瞳は、一層涙を溜めて潤み、キラキラと輝いた。恐怖――いや、違う。恐怖を感じていないといえば嘘になるが、それを大きく凌駕する期待感がなまえを支配していた。んく、と唾を飲み込み、耳まで顔を真っ赤に染めながらなまえは、震える自身の手を心の中で叱咤する。何とかベルトを外し、ジーンズに手を掛ける。
「もちろん下着もね」
 指示に頷き、下着ごとジーンズを足から抜く。
「さあ、おいで」
 ぽんぽんと白蘭は己の膝を叩いてみせた。
 ソファーに座る主人の膝の上に、なまえは俯せの体勢で横たわる。小さな子供が親に尻を叩かれるときのような姿勢だ。しかし小さな子供とは違い、なまえは自ら尻をくいっと突き出した。
 唇から熱い吐息が零れ落ちる。すでに乱れているなまえの呼吸を宥めるかのように、無防備に曝け出された双丘を、白い手の平は優しく撫でさすった。
「ん……」
 鼻にかかった甘えた声を出し、なまえの強張っていた体から力が抜ける。その一瞬を、白蘭が見逃すはずもなかった。
 ――ピシャッ!
「あぁっ!」
 ビクンッと大きく波打つなまえの体を押さえつけ、白蘭は何度もそこに手を振り下ろした。瑞々しくきめ細かな白い肌がみるみるうちに痛々しい赤に染まっていく。
「あ! やぁ……ッ!」
「声は出すなっていつも言ってるでしょ?」
 尻を叩く音を縫うようにして、呆れた声音が言う。
「ひっ……く、ぅあっ……」
 口を押さえようとなまえは手を動かすが、一層強く尻を叩かれてしまい、断念する。行き場を失った手がソファーにしがみつくようにして爪を立てるものの、その程度で悲鳴を抑えられるはずもない。声を上げると次は余計に強く打たれてしまうので何とか必死に堪えるが、難しい。そしてどうしても抑えきれなかった何度目かの甲高い悲鳴を上げた瞬間。
「一体、何度教えたら覚えるのかな。その辺にいる野良犬でももっと賢いよ」
 そんな蔑む声が耳に届いて、なまえの瞳からはついに涙がポロリと溢れた。
「ごめん、なさ、許し……っ、ゆるしてぇ……!」
 小さな子供が親に許しを乞うているかのような声だった。白蘭は目を細めながらなまえに問いかける。
「どうして謝るの?」
「び、びゃくら、怒って……ぁあっ!」
「誰が怒ってるって言った?」
 一際大きな音を立てて手が打ち落とされた。
「なまえチャンがお仕置きして欲しそうな顔してたから、してあげてるだけなのに。僕の所為にするの?」
「きゃうっ、ひぃ、アア!」
 ピシャッ、ピシャッ、ピシャッと続けて叩かれて、なまえはいよいよ子供のように泣き出した。
「痛いぃ……っ、お尻、いたい……!」
「止めてほしい? ……そんなわけないよね」
 哀れなほど赤く染まった臀部に、白蘭はそっと指を滑らせる。散々叩かれたそこには、たったそれだけの刺激でも強い痛みが加えられる。びくんびくんっと体を大きく震わせ――だが、すぐにまた、ねだるように腰をくねらせはじめるなまえを白蘭は突然、自分から引き剥がすと、乱暴に床へと転がした。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -