ツっ君と僕1

「京子ちゃんとハルちゃん、どっちが本命なんだ?」
 勢いよく、口からサイダーが吹き出した。いきなり何を、と口元を拭うのも忘れて振り返るオレに対し、兄さんは泰然と続ける。
「マフィアの女を理由があって数人相手にするならともかく、一般人の女の子を二股かけるのは良くないと、兄ちゃんは思うぞ」
「ふ、二股って……!」
「こいつにそんな甲斐性あるわけねーだろ。京子と手を繋ぐのを想像してニヤニヤするのが精々だ」
「リボーン!」
 例によって、突然背後に現れた赤ん坊。何度も体験しているというのに今回も心臓が跳ね上がる。そしてその驚き以上に言葉の内容に怒りを覚えながら、振り返った瞬間。
「……やったあ!」
「あっ!?」
 上がった歓声に、慌てて正面に視線を戻すがもう手遅れだ。画面の半分、高く積み上がったブロックがオレの敗けを知らせていた。
「ゲームなんて久々に触ったのに、まさか勝っちゃうとはね〜」
「こんなのずるいよ!」
 あんなことを言われるまでは、片手間にサイダーを飲めるくらい、余裕でオレが勝っていたのに!
「そうそう、勝った方は負けた方に何でも命令していいんだっけ?」
「今のは無しでしょ!」
「一回勝負だって、ツっ君、最初に言ってたじゃないか」
 兄さんはそう言って、童話に出てくるチシャ猫のような悪戯な笑みを浮かべてみせた。


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