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この作品には性的描写が含まれています。
18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
NC17 for explicit sex.


「どうした。テメーがしたいって言い出したんだろうが、しっかりやれ」
「だって……っ!」
 確かに、自分ばかり感じているのが不満で、ザンザスを押し倒したのは綱重の意思だ。でも今のこれは、望んだ体勢ではない。
 意外にもされるがままベッドに沈み込んだザンザスが、それならばと要求したのは、所謂シックスナインと呼ばれる行為だった。仰向けに寝そべったザンザスの顔を跨ぐのは酷く恥ずかしかったし、行為が始まってからはやはり与えられる愛撫を享受するばかりで。
「んあ……ふ、んん……」
 それでも必死に、屹立したザンザスのモノを銜えこむが、
「ああっ、そこダメ! やあッ!」
 体内に差し込まれた指が動く度、すぐに快楽を追うのに夢中になって、離してしまう。
「アアッ、ア!」
 濡れるはずのない器官は、潤滑剤の所為でいやらしく音を立てている。まるで本当に女になった気分だった。指が、体内で動いている。ザンザスの指が。抜き差しされて、自分を犯している。その事実を思うだけで、綱重は達しそうなほど興奮していた。
 昂りを握る手を僅かに上下に動かすのが精々で、それも、中のイイところを抉られながら前も口に含まれたりすれば、出来なくなる。これじゃいけないのに。与えられてばかりでは嫌なのに。頭が真っ白になって、何も考えられなくて。
「だめ、だめえっ……また、んああ! また、イッちゃ、」
 ガクガクと膝が震え、腰が揺れる。ダメだと言いつつも、体は快感を求めて無意識に動いた。ザンザスの舌に押しつけるように腰を沈ませる。
「ああッ!」
 絶頂を極めかけたそのとき、指が引き抜かれ、銜えてくれていた唇が放れた。急に取り上げられてしまった快楽に、わけもわからず、綱重は戸惑った。どうして、と非難めいた視線を送れば、返ってきたのは。
「……いいか?」
 何を、なんて聞く必要もない。乱れた呼吸を整えながら、綱重は大きく頷いた。

 今度は逆に、綱重を仰向けに横たわらせたザンザスは、大きく開かれた足の間で、微かに眉を顰めた。
「力を抜け」
「や、やってるけど……」
 指を三本も銜え込んでいた後ろの窄まりは、再びの異物の侵入を阻むかのように固く閉ざされてしまっていた。ピタリと宛がわれた先端の、指とは段違いの質量も原因かもしれない。求める心とは裏腹に、体が強張ってしまうのだ。
「息を吐いてみろ」
 言われ、その通りにした瞬間、ズッ、とそれが押し入ってきた。
「ひああ!」
 反射的に体が上に逃げる。まだ先端だけだというのにその衝撃は凄まじかった。額には汗が浮かび、押し出されるように瞳から涙が溢れて、シーツに染みを作る。
「……一度抜くぞ」
「だめっ」
 青ざめた顔を横に振り、だめ、やだ、と駄々っ子のように繰り返す綱重にザンザスは困惑する。辛いのは間違いないだろうに。ポロリと新たに零れた涙を指で拭えば、違うの、と更に涙を流す。
「嬉し、から……っ」
 逞しい背中に、しがみつくというよりは離すまいとでも言うかのように腕が回された。そして大きく開かされていただけの両足は、腰に絡まるようにしてがっちりとザンザスを挟む。涙に潤んだ琥珀色の瞳が懇願するように見上げてくる。
「お願い、このまま……!」
 ザンザスは、堪らず、目の前の唇に吸い付いた。
「んんん、んう……!」
 口腔内を犯しながら腰を進める。きつすぎるそこは、挿入する側にとってもかなり辛かった。けれど今ここで行為を止めるのは、それ以上に辛いと思えた。
「ひぐ、ぁっ、あ……!」
 全てが収まりきったときには、二人ともすでに息が切れていた。それでも、これで終わりではない。
「……うごいて、」
 掠れた声に促され、ザンザスはゆっくりと腰を揺らしはじめた。同時に、すっかり萎えてしまっている綱重自身にも手を伸ばす。腰の動きに合わせて扱いてやれば緩く反応を見せだした。
「ああっ、ザン、っ、……ザンザス……っと、もっと……ッ」
 背中にグッと爪を立て、綱重はザンザスにしがみつく。そしてボロボロと溢れだした涙でぐしゃぐしゃになった顔を、ザンザスの肩口に擦り寄せた。
「苦しいんだろ、」
 気遣う声には頭を振る。それだけでなく、ザンザスの体に残る傷跡に舌を這わせてもみせる。見せつけるように、淫らに、舐めて。平気なのだと、愉しんでいるのだと知らせるように。
「い、から……っ、もっと、っと……僕を、犯してよ……!」
「綱重……!」
 ザンザスが一際強く腰を打ちつけると、綱重は今までになく体を震わせた。
「あ、あ……!?」
 信じられないといった様子で目が見開かれる。
「ここ、か……っ?」
「あ、ああっ、わかんな、こんなの……うそ、ッあああ!」
 一段高くなった声だけでも、綱重が快感を覚えていることは確実だった。偶然に突いたそこを今度は狙って擦り上げれば、中は激しく収縮し、二人の間でははっきりと勃起したモノがビクビクと震え出した。ザンザスはニヤリと笑い、綱重の腰を抱え直すと、激しい突き上げを開始した。
「あーっ、ああ! ああっ!」
 嬌声が零れる唇から唾液が溢れだす。ザンザスはそれを舐めとって、唇を合わせた。二人分の唾液が絡み、綱重は必死に嚥下するのだが飲みきれなかったものが結局唇の端から溢れていく。濡れそぼった唇を味わいながら、一層激しく腰を使うザンザスに合わせ、いつの間にか、綱重も腰を揺すっていた。
 肉と肉がぶつかり合う音に混じり、上と下から、いやらしい水音が響く。耳までもが犯されているようだと綱重は思った。肌を合わせ、瞼を上げれば紅がこちらを見つめていて。
 彼に、全てを、捧げているのだと感じる。
 体も、心も。何もかも。
「……も、……イく、イッちゃ、あぁ、うあああ……!」
「っ、」
 綱重が白濁を吐き出すのと同時に、短い呻き声を上げてザンザスも綱重の中に欲望を吐き出した。

×

「ピクニックみたいだね」
 遅い朝食であるビスケットを頬張りながら、綱重はコロンとベッドの上に転がった。その体勢でイタズラっぽく笑うと元々幼い顔立ちが余計に幼く見える。バスローブを一枚羽織っただけの格好は扇情的であったが、それを差し引くほどの無邪気な笑みだった。ザンザスは小さく息を吐き、唇の端についている食べかすを指で拭ってやる。
「あのときは、少しは成長したかと思ったんだがな」
 ザンザスの言う“あのとき”がいつのことか、綱重はすぐに理解した。恐らく、八年ぶりに対面したあのときだ。もしかしたらあの争奪戦が行われていた期間のいつかかもしれないが、どちらにせよ外見だけを見て、そう思ったわけではないだろう。あの頃は必死だった。とにかく、抱えた想いを知られないよう、それだけで。
 再びゴロゴロ転がって、ザンザスの太股に頭を乗せる。穏やかな紅とちらりと目が合って、それだけで綱重の心臓は騒がしくなる。
 ――あの頃は、こんな日がくるなんて思いもしなかった。
「昨日、ベルにもガキくさいって言われたよ。スクアーロたちも皆そう思ったらしくて否定しないし」
 ひどいよね、そう零す綱重の顔にはしかし柔らかな笑みが浮かんでいる。ザンザスも笑ってくれるだろうと視線を向ければ、予想に反して仏頂面が見下ろしていた。
「あまり気を許すな」
「……自分の部下だろ?」
 暗殺という仕事を生業にしている所為か、それとも各々が個性的すぎる為か、和気藹々とは言いづらいが、ザンザスと彼らの間には確かに絆と呼べるものがあると思っていたのに。眉を寄せる綱重に、そうじゃねえ、と吐き捨てるようにザンザスは言う。
「そういう顔は、俺の前でだけしてりゃあ良いって言ってんだ」
 そして、目を丸くした綱重が何かを言う前に、唇を奪った。

“tempo giustoで二人の初エッチ”
リクエストありがとうございました:)


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